johnnydaniel

モリのいる場所のjohnnydanielのネタバレレビュー・内容・結末

モリのいる場所(2018年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

老夫婦の奇妙な1日を描いた作品。自らの作った庭からほとんど出ぬまま30年、そこに生える草花や、住む虫たちを観察することを生きがいとする男。彼の家には、何故かひっきりなしに人がやって来る。自らの好きな物を愛し、自由に生きる彼に、人々は惹かれ愛するようになる。どこか日常的で、かと思えば 非日常的、クスッと笑えるホノボノ系映画。

家の 玄関から庭を映す場面がかなり出てくるが、どれも 奥行きがかなりあるように感じられ、とても広い、森のような庭なのだなと感じる映し方をしていた。そして、モリ自身も この庭は自分には広すぎると語っており、更には 池まで遠すぎてたどり着けなかったとも語っていたので、かなりの広さがあるものだと錯覚していた。が、物語のラストで、上空から家が映されており、庭の全貌が初めて見ることができ、その小ささに驚いた。庭の広さは 家3個分程しかなく、玄関から池までに至っては 家1個分程の距離しか無いからだ。モリのセリフとカメラの映し方で 広いと錯覚していたのだ。これは、観客に モリの目線で 庭を見せようという制作側の意図だろう。また、これによって、この程度の広さでも 広すぎると感じるほど この庭に満足していること、いかに観察に時間を割いているのか ということが分かる。毎日 見ているその庭では、彼は 些細な変化も見逃さない。新しく生えていた小さな植物や、いつの間にかあった石ころでさえ 最近までなかっただろうと気づく。どれほど庭を愛しているのかも よく分かる。

モリと透子との関係も素晴らしい。2人の演技力が素晴らしく、愛情をさらに超えた 2人独自の夫婦間を完璧に表していた。互いに干渉はせず、それぞれの時間も大切にする一方、互いの言いたいことも素直に言い合い、上辺だけでなく心から向き合っていることが分かる。2人の会話を聞いていると、若いカップルのイチャイチャを乗り越え、夫婦の安定期も乗り越え、もう一度巡ってきたイチャイチャ期のようだ。写真を見て「鬼ババだ」と馬鹿にするモリに対抗して、「あなた仙人だったんですかー?」と言い返す2人のやり取りなど 観ている こっちまで幸せな気持ちになった。
また、互いに相手には言わないまでも、互いの事を本当に心から愛しているのだと伝わる場面が それぞれに設けられている所も素敵だ。物語のラスト、「オレはもう一度 人生をやり直したい。」と語るモリに、「私は 疲れるからもういいですよ。」と透子が返す場面。モリからは、自分に振り回されるせいで透子が大変な思いをしていると知っているので、もう一度やり直せたら もう少し 透子の意見も尊重してやりたかった。という思いが伝わってくる。一方、透子からは 今の、モリに振り回される生活にとても満足しているので わざわざやり直す必要なんかないわ。という思いが読み取れる。互いの性格もよく分かる上に、互いを心から愛している事が分かる最高の場面だと思う。
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