くりふ

ハッピーただいま逃走中のくりふのレビュー・感想・評価

ハッピーただいま逃走中(2016年製作の映画)
4.0
【“ハッピー”が逃げるワケ】

IFFJ2017の上映にて。

事情から睡眠不足で臨んだが目、覚めた。斬新さ薄く、深くもないが、手堅い面白さを堪能。

ヒロイン、ハッピーを演じるダーヤナー・ペーンティがまだ堅いかなあ…というのと、終盤に向けドタバタが乗算にならず、型崩れしそうでハラハラする辺り欠点に感じたが、他は全般、印パ事情に暗い私でも充分、楽しめました。

親が決めた政略結婚に反発、逃亡を企てるインドの花嫁ハッピー。が、手違いから間違った逃亡先に配達(笑)され…気づけば独りアッチ側に!さあどうするどうなる!?というラブコメ。

まず、お話の作りが巧いなあ、と思いました。印パ対立に詳しい人はより楽しめるか、逆に粗が気になるかもしれないが私はスナオに感心。知らずに越境するインド女性を鏡として、お国事情や夫々の国民感情、女性問題までをサラリと、笑いに包んで映し出す。

現実は笑って済ませられないのでしょうが、民衆レベルではこんなふうに、もう喧嘩やめようよ、と感じている人が多いのでは?と思わされました。パキスタン人を悪役にしないところがいいですね。まあ、インドのスーパーヒロインにパキスタン人が変えられてゆく…という展開はインド映画ならでは、ではあるわけですが。

ディーピカちゃんを漢らしくしたようなダーヤナーさんが嵌り役。少し前、もっと強烈な南インド娘を別に見ていたこともあり、まだ弱いかなあ…とは思いましたが。生真面目さが先に出ていますね。これでユーモアの醸しがあると、より魅力膨らんだと思います。

が、そこを埋めるように、セカンドヒロインのパキスタン娘、ゾヤを演じるモーマル・シャイフがまた、いい味出すのですよね。初登場時に、ここまで切ない役に膨らむとは予想できませんでした。これら二人の、真っ当な女子力が映画を底支えしています。

ハッピー彼氏のだめんずぶりが心配になっちゃいましたが、男衆も皆、好演ですね。悪役も、悪人というより力の行使に憑りつかれた男という設定で、つまり男らしい欠点でまとめた人物であったことが、救いではありました。

…こういう真っ当に面白い映画、日本のシネコンで扱ってほしい!

<2017.10.9記>
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