匿名は人を救わぬ……か?
白石和彌監督作品の中でもかなり異彩を放っている作品。リリーフランキー、ピエール瀧という”ブッコミ”コンビが抜擢されているにも関わらず、聴衆の反応はなんだか心許ない。確かに、中盤以降のとっ散らかりぶりと匿名性否定の説得力のなさが目立って乗り切れない印象。
白石和彌監督であれば、あのサニー信者グループに同監督作「凶悪」みたコメディ臭を湛えればそれなりに面白くなったかもしれないけど、とすると匿名性の否定が成り立たないため叶わない。結果、白石和彌監督のお家芸をわざわざ殺して、らしくないところに不時着した妙な出来上がりとなった。なんなら私は、この題材であれば園子温が監督したら丁度良いのではないかと思った。
“ち◯ち◯を触るなっ!!”
とはいえパワーワードの応酬、リリフラ&ピエールコンビの漫才ぶりなど、やはり白石和彌的なシーンはすこぶる印象に残っている。このすぐ後に監督の代表作たる「孤狼の血」が公開されたわけだが、もしかしたらこの映画の経験は「孤狼の血」撮影に兼ねた良い薬だったのかもしれない。