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IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。のhi1oakiのレビュー・感想・評価

4.0
S・キング原作モノのトラウマ映画としてはやはり『ミスト』や『シャイニング』越えは無理だったか。
そもそも大味過ぎるペニーワイズが逆に怖くない。ジョーカーとビートルジュースとマスクを足して10くらいで割っちゃってる感じで、結局騒々しい怖がらせ(来るよ…来るよ…ワァーッ!ってやつ)に終始してしまったのが残念。
それでも同窓会映画の部分が結構しっかりしているので面白い。モダンホラーの帝王と呼ばれるS・キングだけど、非ホラー作品でも『スタンド・バイ・ミー』や『ショーシャンクの空に(刑務所のリタ・ヘイワース)』等の傑作も多く『It』は原作からしてそのミックス具合が匠の技なわけで、そこをちゃんと意識して作ればジャンルミックス映画として面白くなるよね。第1章はホラーとジュブナイルフィクション、今回はそこに同窓会をプラスしている。
キング作品といえば文章での心理描写が絶妙で面白く(怖く)て、映画化の際は稚拙な演出でそこがうまくいかず駄作になることが多いんだけど、今回も出番がある子供時代パートのキャスト、みんな巧すぎでしょ。

『It』の話がいいのは喪失をちゃんと喪失として、乗り越えるものに設定しているところ。“○○を生き返らせてハッピーエンド”って話じゃない。そんなこと『ペット・セマタリー』を書いたキングがやるはずないし。

あと映画としては、エンドロール後にゴソゴソ…やっぱり…みたいなのを付け足さなかったのもいい。やっちゃうんじゃないかなぁ…と思っていたので。

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無粋であることは理解しつつ邦題問題。
かつて「The Thing」を『遊星からの物体X』(あるいは『遊星よりの物体X』)としたのは“よくわからないもの”を“いぶかしさ”込みで巧くローカライズした面白い例だったと思う。
同じような漠然とした原題を持つ「IT」。1990年のテレビシリーズ版が日本で公開された時は『IT/イット』というシンプルなものだった。
そして今回、2017年と2019年に分けて2章立てで公開されたリメイク版は…

「IT:chapter one」→『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』
「IT:chapter two」→『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』

は?
副題を変えずに“THE END”を挟む!
いやいやそもそも1章で“終わり”というワードを入れているのに、それを残したまま“終わり(THE END)”をまた追加するというトリッキーなセンスの無さ。
そもそもペニーワイズには“それが見えたら終わり”なんていう設定は無く、ピエロならではの怖さと臆病さと気まぐれさを併せ持ったキャラだと思うんだよね。だからゴリゴリのホラーではなく少年少女の冒険譚として成り立つわけで。
素直に『第1章』と『第2章』、あるいは『前編』と『後編』で良かったと切に思う。
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