福福吉吉

小川の辺の福福吉吉のレビュー・感想・評価

小川の辺(2011年製作の映画)
3.5
◆あらすじ◆
戌井朔之助(東山紀之)は藩主の命により脱藩した佐久間森衛(片岡愛之助)を討つことになった。森衛の妻は朔之助の妹の田鶴(菊地凛子)であり、朔之助は田鶴を斬るかもしれないことに心を痛めながら森衛の元へ向かう。

◆感想◆
藩のために意見を具申したが故に藩を追われることになった佐久間森衛と剣の達人が故に義理の兄弟である森衛を討つことになった戌井朔之助のやるせない関係とその経緯を丁寧に描いており、晴れ渡った青空のもとで無情な運命が進み続ける映像が印象的でした。

戌井朔之助は生真面目な剣の達人であり、佐久間森衛の討つ命を拒否しましたが、皮肉にも佐久間森衛も剣の達人であり、朔之助以外に討つべき人物が藩にいないため、無理やり受諾せざるを得なくなります。朔之助は森衛の意見が正しいことを分かっていながら藩主の命に従わなければならない状況にあり、その心情の複雑さが描かれていました。

佐久間森衛も朔之助と同様、生真面目であり政治にも優れた能力の持ち主でしたが、正論を押し過ぎた故に藩主の反感を買ってしまいます。そのあたり世渡りが下手なように感じました。朔之助と森衛は旧知の仲であり、信頼関係があったように観ていて感じました。

朔之助の妹で森衛の妻の田鶴は気が強く、兄の朔之助とともに剣の修行を積んでいた男勝りの人物として描かれています。しかし、田鶴は密かに戌井家の奉公人である新蔵(勝地涼)を好いており、身分違い故に結ばれなかった部分に悲しさを感じました。

ストーリーは朔之助が新蔵とともに森衛を討つために旅を続ける中で過去の回想により詳細な部分が分かるようになっており、理解しやすいものだと思います。派手なシーンはほとんど無く、静かさを印象づける作品となっており、透き通った空気に包まれるような雰囲気で進行してきました。人によっては退屈に思えるかもしれません。

剣劇アクションは限られており、登場人物たちの心情や時代の理不尽さを味わう作品になっており、なかなか面白かったと思います。

鑑賞日:2023年12月27日
鑑賞方法:BS日テレ
(録画日:2023年1月25日)
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