糸くず

アケラット-ロヒンギャの祈りの糸くずのレビュー・感想・評価

3.1
第30回東京国際映画祭にて。

フイリン(ダフネ・ロー)が些細なきっかけで人身売買に荷担してしまう前半は緊迫感があっていい。鏡の前で難民たちをあしらう振る舞いを練習するフイリンと現場での満足げな笑顔、子どもの首を絞めたあとに強く抱き締めるダイナミックなアクションなどダフネ・ローの魅力と相まってキラリと光る場面がいくつかある。

しかし、タイトルが出てからが観念的すぎるというか、独りよがりというか。ラブストーリーとサスペンスとバイオレンスとポエトリー、全てがカオスとして存在しているのではなく、水と油のように混ざらないものを無理矢理かきまぜたような印象。タイトルの意味が「来世」であることを考えると、ラストの「窓から何が見える?」という問いとその答え(「星」も「飛行機」も遠い彼方にあるものだ)が身に染みてくる気もするけども、全体としては虐げられる者たちの祈りがぼやけて見えるのが厳しい。
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