糸くず

アンダーグラウンドの糸くずのレビュー・感想・評価

アンダーグラウンド(2017年製作の映画)
4.3
第30回東京国際映画祭にて。

わたしは「みんなが幸せになろうと努力しているのに、誰も幸せにならない」という話に心を打たれることが多いのだけど、この映画はまさにそういう話の直球だったので、もちろん大好き。

墓地に住むホームレスの墓堀人の話が「実話にもとづく物語」として成立するフィリピンのリアルそのものに打ちのめされてしまうのだけど、そうしたリアルに寄りかからず、ちゃんとドラマを作っていることに好感が持てる。

バンギスのやっている仕事は倫理的に法的にもアウトであるけども、彼は悪人ではないし、彼の悲惨な運命が当然の報いであるとも思わない。彼の悲劇は彼のわずかな力ではとうてい及ばないところで始まっている。

変わらない服装、豚の貯金箱、ビニール袋のトイレ、投げられる扇風機、ペンチと金歯、ハローキティの指輪。想像を絶する底辺で生きる人々の声を迫真のリアリズムで届ける傑作だ。

ちなみに、手持ちカメラでの撮影による手ぶれが非常に激しいので、酔いやすい人は要注意。
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