たく

忘れじの面影のたくのレビュー・感想・評価

忘れじの面影(1948年製作の映画)
3.5
女の愛情、男の薄情ということで、ひさびさに見るジョーン・フォンテインが少女から貴婦人までを演じ分けて魅力的だった。

冒頭で決闘を申し込まれた男が、ある女性から届いた手紙を読んでいくうちに事の真相が明らかになっていく回想形式の作り。
1900年頃のウィーンで純真な少女のリザが隣に越してきたピアニストのステファンに一目ぼれするんだけど、彼がプレイボーイらしくてお近づきになれないまま母の再婚でリンツに越しちゃうんだよね。
ある夜、偶然リザと会ったステファンが逆に彼女に惚れちゃっていい感じの一夜を過ごすんだけど、コンサートの都合で2週間後に戻る約束を守らず帰ってこないという軽薄さ。このシーンをのちに息子との2週間のお別れに重ねる演出が上手い。

ステファンが弾くリストの「ため息」がBGMの中心になっててメランコリックな雰囲気を高める。モーツァルト「魔笛」のコンサート会場のシーンで行きかう人々を交互に追うカメラが見事で、こないだ観た「快楽」をちょっと思わせたね。
あと、チフスが出てくるのが今のコロナの状況に重なってゾッとした。

「快楽」に続いてマックス・オフュルス監督2本目と思ったら、大昔に「輪舞」を観ていた。なるほどダニエル・ダリューはオフュルス監督作品の常連なんだね。
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