Kachi

リズと青い鳥のKachiのレビュー・感想・評価

リズと青い鳥(2018年製作の映画)
4.5
「響け!ユーフォニアム」のサイドストーリーとのことだが、今のところ最も好きな作品。

いわゆるアニメ版の再編集ではなく、映画用に作られていたこともあり、映画的な脚本と作品独自がもつ世界観の両方に魅了された。

「リズと青い鳥」という架空の童謡に出てくる、天涯孤独のリズと正体は青い鳥である美少女のお話が、みぞれと希美の関係とパラレルに描かれる。この架空の童謡が醸し出す世界観は、メーテルリンクの『青い鳥』のチルチルとミチルの物語が織りなす雰囲気を髣髴とさせられ、あの世界観が好きな私にとっては初めのシーンからずっと引き込まれるような展開だった。

リズと青い鳥の第3楽章は、オーボエとフルートの掛け合い。みぞれのオーボエが、「リズと青い鳥」の物語の核となる「なぜ、リズは青い鳥を最後逃がすことができたのか?」という心情理解と結びつく。リズと自分を重ね合わせていたみぞれは、実は自分の置かれている状況が青い鳥に近いのではないか?リズこそが希美なのではないか?希美の元を離れても、それは裏切りなんかではないのだ、という気づきと決意が、演奏にも現れる。
(と同時にフルートの音が霞む…。フルートをやっている私からしたら、こういう演奏になること分かるなぁ…と心底思ってしまった)

音楽や映像、そして2人の女子高生の危うい関係というなかなか混ぜたら危険なものを、美しく調和させて、見応えのある作品世界を作り上げていた。その創意工夫に敬意を称したい。

余談だが、みぞれ役の種崎敦美さんの演じ方は、フリーレンに通じているなと思った。アーニャとの比較がされがちだが、フリーレンに繋がる系譜はこちらだと思う。
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