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リズと青い鳥のharunomaのレビュー・感想・評価

リズと青い鳥(2018年製作の映画)
5.0
『リズと青い鳥』
微細なものの変化(繊細さ)と音響的自由でその存在を活写した、芸術の領域においてアニメ映画の金字塔とも呼べる作品。
Shaning M6proと2.5mm,SENNHEISER HD650、このように自転車を走らせながら映画の劇伴というより音、音響を聴いている訳だが、なべてアニメーションの唯一の現実は音と声にしかなく、フィクショナルな音というものは存在せず、たとえ作られたとしても音はどこまでも現実の在り処となる。

 たとえどのように身を置こうとも、私たちは見ることやめた自分を考えることはできない。人が夢を見るのは、ただ見ることをやめないためだと私には思われる。-ゲーテ『親和力』-P237

牛尾と鶴岡と山田とのアンサンブル。
(冒頭と最後の足音は音楽の一部。普通劇伴と言えば先に映像があってそこに合わせるが、リズでは逆に音楽に合わせて作画するという手法。twitterより)
音響的自由がシネマの最後の活劇を準備する。
ここでは、シルヴィアの正統性が息づき、あまりにも完璧であるがゆえに見直せない。
ただ入れ子構造の絵本のシークェンスは少し冗長に思えた、それでもジャスト90分だが。
たぶんこの映画を観るために生まれてきたのだと思いつつも、計算可能性の内部で、魂の渇望が足りない気もするのだ。それはどこに起因するのだろう。
残りの時においては、迷いなく
『おおかみこどもの雨と雪』を選ぼう。幼年期に関わるフィルム。わたしたちのあいだで。
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