EmiDebu

ハングマンズ・ノットのEmiDebuのレビュー・感想・評価

ハングマンズ・ノット(2017年製作の映画)
3.5
大きな予算を持つハリウッド映画が必ずしも面白いわけではない。裏を返すと低予算の映画が必ずしもつまらないとは言い切れない。

前々から観たいと思っていたこの映画。グロテスクで胸糞悪い映画なのは間違いないがそれはある意味でそれほど視聴者の心を揺さぶっていると受けとることもできる。実際にこの映画はB級映画特有の半笑いで流し観するようなものではなく、終始漂う不快感から目が離せなくなってしまう。自身も視聴しながらずっと眉間にシワが寄っていた。

京都を舞台にコミュ障の大学生と、限度を知らないイカれたヤンキーの殺戮を描く。ただものじゃないなと思わせたのはリアリスティックに描かれる大学とヤンキーのコミュニティそして、圧倒的な演技力である。顔が良いだけでゴールデンのドラマに出演する俳優の当たり障りのない演技とは明らかに異なっていて、たこ焼き屋の店員、大学のサークルのメンバー、細部に至るまでリアルな演技だ。特にボランティアサークルの会議は、もうここまでくると演技じゃないという粋にまで達している。劇団員らしくハキハキと喋らず、円滑にスラスラと進行されることもない、新歓で流す映像のクオリティの低さまでリアル。映画やドラマでいつのまにかすんなり受け入れてた美男美女ばっかりのクラスや、1人ずつ発言をする会話、そういった不自然をなくし究極にリアルな描写は見ものだ。

秋田で過ごした学生時代。恥ずかしながら、素行の良くない行いもした。もちろん、秋田にいるヤンキーはこの映画のそれとは違ってこんなに暴力的じゃないし、知らない人も多いだろうが驚くほど良い奴らだ。だから、こんな奴らじゃないんだけど、グループ内のやりとりがこれまたリアル。バク転をさせるシーンなんてほんの些細なものなのに「っぽいわ〜」って思った。

心理学の自己愛傾向2次元モデルにおいては確実に他者埋没に分類されるコミュ障柴田は痛々しいほど自己理解がなく、しかしこれもまた「こういう人いるわ」と思わせるのだ。

コミュニティーを描くのはリアルだったと書いたが、それ以外は非現実的で雑な部分も目立つ。バイオレンスを描くために、やたら銃が登場するし射撃センスも謎にピカイチだ。うっすい血の色や、そもそもここまで野放しになっているのもおかしな話だ。まぁ、そこは良いじゃないかと。自主映画でここまでのクオリティを出せるならおいおいハリウッドばっか追ってられない。
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