つのつの

予兆 散歩する侵略者 劇場版のつのつののレビュー・感想・評価

4.0
黒沢清お得意の陰影のついた映像と半透明遮蔽物が大活躍してるけど、それ以前に表情の見えない身体の不穏さが最高だった。
2人の人物が向かい合う時はどちらかが画面に背を向けてる時が多いし、
東出が中学教師に迫る場面で上半身が切れる。
それだけで人間の存在の不安定さや得体の知れなさ、これから絶対良くないことが起こる"予兆"を感じさせてしまうのは黒沢清の凄い所。

東出が染谷の、蛇の道を彷彿とさせるようなダークな犯罪バディモノもすこぶる面白いが、何より夏帆のホラー映えする表情が素晴らしい。
病院の待合室で異音に襲われるときの怯え顔が、顔それ自体が恐ろしいものとして映るから余計に怖い。夏帆最高!

厚生労働省が出てきてからは正直少しダレるが、それもあくまで話を進める程度の設定でしかないから直ぐに消えてしまうのも潔い。
そこからの廃工場の対決もカッコよかったなあ。
人間の卑近さにつけ込み取り付いて離れない侵略者の邪悪さが、容赦ない痛みとして襲ってくるのは高橋洋脚本ならでは。

パイプ落とし、斧、銃などドラマチックな小道具をフル活用しながら、最後には絶望に落とされるラスト。
この一切の救いのなさには、最早テンション上がってしまった!

長澤まさみの散歩する侵略者の不思議なハートウォーミングさも好きだったけど、こっちもかなり好き。
夏帆主演のホラーどんどん撮って!
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