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マスカレード・ホテルのJIZEのレビュー・感想・評価

マスカレード・ホテル(2019年製作の映画)
3.9
都心に構える由緒正しき超豪華一流の宿泊地"ホテル・コルテシア東京"を舞台に都内近郊で立て続けに発生する謎の暗号数字を用いた"犯行予告連続殺人"に立ち向かう潜入捜査官と優秀なホテル従業員の華麗なる奮闘を描いたアンサンブル型ミステリー映画‼︎まずコレ『HERO(2007,2015年)』シリーズの座組みが再集結した映画だ。また映画の全部が気品に溢れて豪華。真っ先に思い浮かんだのが三谷幸喜が監督した同じ高級ホテル内での大晦日の大騒動を1日に集約した『THE 有頂天ホテル(2006年)』。いわゆる作品の構造は仮面を被ってホテルへ来場する豪華キャスト勢が軒を連ねる"グランドホテル形式"が採用されている。作品の前半では素性がさまざまなまさに宿泊客それぞれの"仮面"の奥に隠された本性が捜査線上の疑惑と並走しつつも赤裸々に映し出され作品の後半では本編主軸のテーマとなる殺人事件の真意が姿を現わす。木村拓哉演じる潜入捜査官の新田の内面的な成長物語でもあり長澤まさみ演じる有能なホテルクラークとの置かれた"疑う立場"と"信じる立場"を対で結ばせた鏡像関係も相棒ならぬ名コンビ感を発揮していたのではないだろうか。冒頭で髭を生やして頭ボサボサの新田が私服警察の風貌でコルテシア東京のロビーをコーヒーを片手に見回すが終盤で訪れるほぼ同じ画角かつカメラワークで繋がる円環構造はまさに新田の意識的な"変化"を同一的に描き出していた。余談だが明石家さんま(友情出演)は何処で登場してただろうか。また理髪店をホテル内に設けてる設定はさすがに笑いましたね。。

→総評(豪華絢爛の五つ星超高級ビジネスホテル開幕)
総じてだいぶ惜しい映画だった。もっと云えば前半が謎を秘めた宿泊客を引き合いに丁寧なミステリーを描いていき秀逸。後半の予告殺人の解決パートのくだりが力業感あり畳上げる感じが正直納得し切れず台詞だけで収束させた感が否めずだいぶ失速した印象でした。おもに豪華なキャスト勢の顔ぶれや厳粛で華麗な舞台設定,高級ホテルという普段の日常から隔絶された避暑地を人間心理にあてがえた揶揄や名言かつ名演の披露など背景の固めかたは本当に素晴らしかった。が,本質の予告殺人そのものが作品の前半とはほぼ呼応しておらず本編の断絶感だったり後からエピソードを継ぎ足しで派生させた感じが腑に落ちない。もちろん小日向文世演じる能勢のチャーミングな感じとか高嶋政宏演じる宿泊客の本当にこういう奴いる感じなどリアリズムに配したサイドエピソードの工夫して作った感じとかは観てて唸らされる箇所もかなりあった。またこの作品で白眉とも言える美術の徹底ぶりには舌を巻くレベルでプロ意識が凄過ぎる。セットとは言えバックヤードやフロントの裏側,結婚式場やディナー会場など細部に至るまで丹念に作り込まれ眼を見張る完成度だった。生瀬勝久演じる宿泊客に新田が激怒され簡単にPC弁償します!とか軽々しく言っちゃう感じもホスピタリティ精神ガバガバで笑いました。あと俺の本作における理想シナリオでは『オリエント急行殺人事件(2017年)』みたいな総動員で一人の人間を殺害するため綿密な犯行を暗躍していたみたいなオチだと最高でした。興収が見込めれば続編にも木村拓哉主演で大いに期待したい。というよう実際にホテルマンを志望する人もこの映画を観て増えるだろうし舞台のモデルとなった日本橋の"ロイヤルパークホテル"にもいつか客として足を運んでみたいと感じた。ガテン系潜入捜査官と有能なホテルマンという稀代の掛け合わせをぜひ本編で贅沢に楽しんでもらいたい。
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