このレビューはネタバレを含みます
すっかり”正義の人”というイメージが定着してしまったからか、また絶妙な人物を演じているデンゼル・ワシントン。
弁護士が主人公の映画ではあるが、法廷シーンは殆どない。
どちらかと言うと、その弁護士の生活と精神にスポットが当てられている。
冒頭から前半戦で、主人公ローマンの正義感をたっぷりと見せて、後半に向けてこの映画の主題でもある「正義の対義は悪ではない」と言う局面にたどり着くまでは少し冗長でもあった感はある。
もう少し、ローマン自身の正義感と厭世的な性格を分かりやすく見せて欲しかった。
社会という実態のない敵が、ローマンを蝕んでいく様が非常にドライに描かれていて、とても切ない。
正義に燃える弁護士を、デンゼル・ワシントンが演じる!というステレオタイプで鑑賞し始めると、間違いなく途中で絶句してしまうだろう。
画的には、コリン・ファレル演じる人物の方が世俗的で欲に塗れるキャラクターっぽいのだが、実際は特段言及するような”悪人”ではなく、むしろ好印象を抱くことができる人間に見えてくるのは、この映画の醸し出すバランス感覚ゆえなのだろうか。
「トレーニング・デイ」と同様に、正義の中の非正義を扱った、重いテーマの作品。