猫のピッピ

アンダーグラウンド 完全版の猫のピッピのレビュー・感想・評価

5.0
異様なテンションで出てくる人たちのやってることはハチャメチャだし、楽団は演奏しながら走って付いてくるし、なんだこれは!?と、単館系を見始めた頃に出会って度肝を抜かれた映画。
芝居では小劇場やアングラが好きなので、映画にもこういう自分の好みド直球の作品があるんだ!と世界を広げてくれました。

しかしハチャメチャな行動の背景は重く影が濃く、現実の悲劇を紛らすために人はこんな行動をしてしまうかもしれない、というリアルも感じる。人間は大変な時に訳の分からない行動を取ってしまうものだという認識で生きてる自分にはとてもしっくりくる。
もちろん創作として極端に描かれてるので、笑ったりツッこんだりツボにはまれば相当おもしろい。
でもラストが近くなるにつれ、ハチャメチャな行動のツケと背景の影の濃さが登場人物たちに被さってきて笑いとツッコミどころではなく、愚かしさと虚しさに呆然となった。
そんなところであのラストシーンはずるいよ、泣くしかないじゃないか。

初めて映画版を見たときとは世の中も変わり、戦争が遠い世界ではなくなってしまった。
戦争の悲劇や恐怖には狂乱状態にならないでいられないのかもしれない、ということもリアルに考えるようになってしまった。
前とは違う意味でも、この作品がより心に響く。

映画版で分からなかったことが理解できたりしたので長いけどこちらの方が好きです!
細かいところは最早どうでもいい、とにかく心が揺さぶられる。自分にとっては今のところ揺るがないオールタイム・ベスト。
猫のピッピ

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