ブタブタ

ウルトラ6兄弟vs怪獣軍団のブタブタのレビュー・感想・評価

ウルトラ6兄弟vs怪獣軍団(1974年製作の映画)
4.0
円谷プロとタイのチャイヨープロ共同制作による非公式扱いの劇場版ウルトラマン。
この辺の今も続くゴタゴタは円谷英明・著『ウルトラマンが泣いている~円谷一族の失敗~』に詳しい。
昔住んでた町田に怪しげなTOYショップがあって、そこには『ウルトラセブン12話』『狂気人間』等々の海賊版DVDが売っていて『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』も売ってた。
仮面ライダーの現在の隆盛と比べるとウルトラマンがイマイチ寂しいのはやっぱり円谷一族による同族支配が続いたのとフランチャイズ化が失敗してるせいだと思う。
ウルトラマンは東洋の仏教思想、多神教的世界観の宇宙を舞台にしてると思う。
東洋の仏教思想は西洋のキリスト教的一神教世界とは違って、他の宗教の神様でも何でもかんでも取り込んで自分の所の神様にしてしまう。
西洋ではサタン、悪魔とされる存在も仏教に来ると大黒様や阿修羅等の神様になってしまう。
ならばウルトラマンも他の作者が作った作品でもどんどん取り込んでユニバース化してしまえばいいと思う。
『アウターマン』の河崎実監督が「昭和ウルトラマンと平成ウルトラマンが殺し合う」と言うウルトラマンの映画を企画し却下されたらしいですが、この辺の円谷プロの狭量さがウルトラマン世界の拡がりを阻害してると思う。
キン肉マンの一番最初の読み切り版ではキン肉マンもウルトラ兄弟の一人だと勝手に描いて円谷プロからクレームが来て無しになったらしいですがキン肉マンもウルトラマンに取り込んでしまえばよかった。

最近では70年代特撮への愛とオマージュに満ちた『ブレイブストーム』が『レッドバロン』『シルバー仮面』『アイアンキング』のマイナー特撮作品のクロスオーバーを非常に上手くやってた。
アベンジャーズの1周遅れの安易なマネッコではなくて、『ウルトラマン』と言う絶対的な世界観を持つコンテンツを中心に置き、それに色んな特撮からアニメから何からあらゆるキャラクターを平行世界や多元宇宙設定で登場させればディズニーやMARVELが今やってる様な統合的キャラクターコンテンツ&ユニバース世界を構築して益々面白い『ウルトラマン』が作れると思うのです。

で『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』ですが、面白い!
『タロウ』のZATの流用によるタイの地球防衛チーム(ZATタイ支部?)の2人の隊員。
「優秀な隊員」との触れ込みながら劇中ほぼ役に立たない漫才コンビ。
片方の声の吹き替えは『ヤッターマン』の「お仕置きだべ~」の人だし、この2人が狂言回しとして良い味を出している。
「第7ロケット基地」内部の派手派手しく安っぽく意味不明な機械がウネウネ動く様は楳図かずおの『わたしは真悟』の生体メカみたいにも見えて不気味かつキッチュ。

「集団リンチ」と揶揄されるバトルシーンも殆どコントみたいなので残酷さは余り感じない。
それにウルトラマンと怪獣って命をかけた「殺し合い」をしてるのだし。
(なので僕は「怪獣保護」とかキレイ事を言う『ウルトラマンコスモス』が大嫌い!)
この辺りの描写は『ウルトラマンレオ』の末期、予算も無くなり特撮は安っぽく、その都合で人員整理の為か、やたら人が死に(シルバーブルーメで基地全滅はウルトラマン史上最強トラウマ)残酷描写はより過激になっていった頃に近い。

そして本作のオリジナル・ウルトラマンであるヒンズーの神である白猿ハヌマーン。
帝釈天が本来、全宇宙神「天帝」であったのに仏教に来るとずっーと下っぱになってしまう様に、ヒンズーの神ハヌマーンがウルトラマン宇宙に来ると三下、ウルトラマンの下級存在みたいな扱いになるのも非常に正しい。
日照りに苦しむタイの民衆の為にハヌマーンが太陽神に直接交渉して地球から遠ざかって貰ったり、民話・寓話的なお話しも入れつつウルトラマン+ハヌマーンと神話に於ける「巨人族・魔神」である怪獣軍団との戦い。

黒歴史扱いの本作ですが版権ももうワヤクチャなのでYouTubeで見れますし是非一度ご覧下さい。
オススメです。

それと庵野秀明監督(企画・脚本ですが)による『シン・ウルトラマン』
これ迄の円谷プロからの横槍や古い体制から完全に独立した自由な才能や製作体制による初めてとも言えるウルトラマンがどうなるのか楽しみです。
ブタブタ

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