ち

娼年のちのネタバレレビュー・内容・結末

娼年(2018年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

すごく好きなタイプの映画だったし、面白かった。こういう映画こそ、映画館で見るべきものだなと感じる。閉塞された真っ暗な空間で見るからこそ登場人物の感情とか、その場面の緊張感とかがより感じられるし、セックスのシーンが「エロい」ではなく「官能的」に感じられる。
領が娼夫として成長して、その仕事にやりがいを感じるようになるのに納得できるバックボーンがちゃんとあるからこそ安っぽく感じない。母親の愛が足りてないまま育ってしまった少年が年上の女性に興味を持つことはすごく自然なことだし、逆に母親の愛をしっかり貰えなかったが故に無気力で何にも面白味を見出せてないこともわかる。そしてそこで静香に出会って娼夫という仕事に出会って女性だけでなく人というものに興味を持ってちゃんと一人一人に一種の愛情を持って、一人の人間として相手と接することができるようになった。彼が成長する手段はセックスだった。セックスに目が行きがちだけどそれだけじゃなくてちゃんと一人の人間の成長の物語として面白かったし、その手段がセックスっていうのも今まで見たことがなくて面白かった。映画の好きなところはセックスですら芸術になるところ。ただいやらしい見ている人が恥ずかしくなってしまうようなものではなくて、絵画の裸体を見ているかのように見入ってしまう美しさがある。でも、そこにあるのは美しさだけじゃなくて、人間の欲望がぶつかり合ってるっていう生々しさもあって、綺麗であり歪なものこそが人を一番惹きつけるんだな、と。
セックスっていうテーマにも関わらず、汚くなくいやらしくもなく、下品でもなく品はあって、堕ちていくのではなくむしろ成長していくっていうストーリーが斬新で面白かった。最後の2回目の試験のセックスシーンはもうちょいなんとかならんかったかなとは思うけど。
もう一回映画館で見ておきたい映画。
ち