ごぶさたマン

ジェーン・グドールの軌跡のごぶさたマンのレビュー・感想・評価

ジェーン・グドールの軌跡(2017年製作の映画)
4.4
まだまだ詳細な研究が進んでいなかった野生のチンパンジーに密着して、その生態に関する貴重な報告を多く行ったジェーン・グッドールの功績は偉大だと思う。
彼女は研究の初期には「チンパンジーには人間に似ている部分が多い」という趣旨のコメントをしており、そうした認識が通説となっていた時期があったようだが、後代には「チンパンジーは人間と大きく異なる」という認識を持つ研究者も出てきたようだ。どちらの認識も当たっているような気がする。

グッドール女史が、後にチンパンジーの大きな群れが小さな群れを暴力で全滅させる事件が起きたことで、「人類が持つ残忍性はチンパンジーの暴力性から遺伝的に受け継がれたもの」という認識を持つに至ったことが描かれていたが、この点はかなり印象的だった。

どんなに文明や技術を進歩させても、他者を暴力で排除することを続ける限り、チンパンジーも人間も変わらない。
教育と教養で精神的に成熟しない限り、人類もサルと違わない。

ジャレド・ダイヤモンドの著作と合わせて、いろいろ示唆に富む秀逸な記録映像だと思う。
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