完璧に仕立て上げられたオートクチュールの衣裳。それを身に纏うは、素朴な時に下品ともいえる行動をとるアルマ。整えられた美しさではない自然美。
厳格な規律が敷かれたレイノルズの生活に辟易してしまう。自分ルールを平気で周囲に強制するんだから困ったもんです。でも男としては他人事でないような…
レイノルズは亡くなった母の亡霊をいまも夢に見る。そして彼の生活においては、どんな場面にも必ず姉が同席する。マザコン&シスコン。普段強気な奴ほど裏では“M”なんだよな。その逆もまた然り。
仕立て屋=映画監督、モデル=スター俳優。すべてをコントロール下におきたいレイノルズvs自由奔放でありたいアルマ。
鑑賞前は“魔性の女”的なアルマがレイノルズを翻弄しまくる話だと思っていたけど、案外アルマは普通の人として描かれていて、おかしなのはレイノルズの方だった。完璧であることに取り憑かれた男。
2人が出逢い、レイノルズがアルマを美しく染めていく前半と、徐々にアルマがレイノルズを攻略していく後半。理性と野生の邂逅。すべては仕組まれたゲーム。それを分かっていてもなお、愛のゲームに参加しようとするか？しないか？
ダニエル・デイ=ルイスは自身の引退作にふさわしい好演ぶり。ジョニー・グリーンウッドの甘美な劇伴。近年のPTA作品にしては珍しく、ストーリーの軸がしっかりしている。ちゃんと面白く、万人にオススメできる作品。
“恋”が人生の謎を解く鍵になる。
