美しい音楽と共にゆっくりと物語が動き始め、
音楽とファッションの美を敷き詰めた芸術のすべてを堪能できるかのように満ち足りた時間をくれる序盤。
そして今、すべてを見終わったところです。
なんとも表現し難い感覚が頭と胸の中に渦巻いています。
いくつかの名画を知る私にとってこの映画を名画だと断言することは難しいです。
少なくとも私自身の基準では名画とは言えない気がします。
しかしこの映画のやろうとしたチャレンジには息を飲むところがあります。そのことは感動と呼んでも良いと思います。
ダニエル本人もプロデューシングに携わっているとのことでしたが、私が想像したのはこの映画のラスト、行方を決める綿密な会議の様子です。
初期の段階で幾つかのラストシーンの候補があったとし、そのどれもが却下されたのだと思います。
そのいつかどこかで見たことのあるすべてのラストシーンは、この映画を作った人にとって満足のいくラストではなかった。
いくつかのブレーンを集めて、長い時間を要したのかそれとも突然どこかから降ってきたのか、そのアイディアは至高のものと言えるでしょう。
この映画の行く末は他の映画と同じようにラストシーンの向こう側にあります。
レイノルズはこの後死ぬかもしれないし、何かの理由で二人はあっさりと分かれるかもしれない…
映画の本編の終わりが通過点だとしてもこの通過点というラストは私たち観客を惑わし、驚かせ、そして考えさせるのです。
個人的にはレイノルズの心の闇の正体をはっきりとした形で掴みたかった気もしますが、すべての答えを知ってしまうのも野暮というものなので、この本を閉じます。
不思議な気分だなぁ………。、
