大森立嗣監督『日日是好日』
樹木希林ファンの長女(AB型・天秤座)と一緒に。
茶道の所作はもちろん、人の姿が本当によく撮れている。希林さん目当てで行ったのだけど、黒木華さん筆頭に演者全員が素晴らしかった。『さよなら渓谷』や『まほろ駅前』シリーズとは天地を為すけれど、映像そのものが全くもって心地良い。
映画そのものが茶道の美しいひとつの所作であるかのような、そんな作品。
茶道・書道・剣道など、道のつく世界を経験している人のみならず、身体を用いることを生業とした人の、その所作を観ているだけで快楽を覚えることがある。かの人はもはや立ち姿でさえも人を魅了する。
二十代前半、働き始めた頃書道を習った時期があって、自分の技術向上が目的というよりは、当時すでに老境に達していた先生の、書字における所作に毎週魅了されに行っていたようなもの。
で、一つのことを追究して結果、そのような所作を身につけることも、もしや可能であった年月を生きて来たはずなのに、果たして自分にはそのような所作があるのかとため息をつく。そして、そのような事を頭で考えている者には、決して人を魅了するような所作は宿らないのだろう。
パンフによれば、撮影直前にほんの少し茶道の手ほどきを受けただけだという希林さんには、なぜ目にも綾なる所作が宿るのか。俳優の怪異としか言いようがない。
