くま

日日是好日のくまのレビュー・感想・評価

日日是好日(2018年製作の映画)
5.0
「あんた、お茶やりなさいよ」
自分も大学入学当初、母に同じ事を言われて茶道を始めた身としては、ハッとさせられた。

終始、黒木華に自己投影していた。戸惑いながらも茶道に魅せられたり、茶道の稽古を億劫に感じたり、できるようになって喜びを感じたり、共感の塊の映画だった。

序盤の袱紗捌きを教わるシーン、お菓子を手掴みで取るシーンなど、異文化に魅せられる2人に凄まじいシンパシーを感じた。千鳥足のように畳歩くシーンは爆笑した。分かるー。
と同時に「この作品、茶道やってない人は面白いのか?」と思った。
ただ茶道の本質はそこではないため、ちゃんと最後まで見て欲しい。

自分が大学時代から今も教わっている先生と、樹木希林さんが同じように、優しく丁寧で、佇まいが素敵で、ちょっと泣きそうになった。指摘の仕方もそっくりで「あぁ~」となった。

お茶会のシーンは瞬時に、横浜の三渓園だと分かった。大変お世話になりました。

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この作品の良さは茶道一本で勝負した映画であることだと思う。
典子の元彼の描写なんか一切ないし、余計な演出がないのが良い。茶道の奥行きに集中できる。

釜の沸く音、柄杓から水を釜に溢す音、梅雨の滴り落ちる音は心地良いし、道具から広がる世界観を想像する典子のシーンは、茶道を知らない人でも茶道の何たるかに少しでも触れられたのではないだろうか。

また、作中で「一期一会」「日日是好日」「喫茶去」といった、茶道由来の言葉・禅語を物語を通じて、作者なりの考え方を何となく提示しているところも良い。要点を何となく押さえられている。

作中の「やめてもいいじゃないの。ただ美味しいお茶を飲みに来ればいいじゃないの」という、樹木希林の言葉に自分も救われた部分はある。何回もそのシーンを繰り返した。
茶道7年目の青二才だが、「喫茶去」という言葉を胸に茶道にこれからも励んでいきたい。
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