豊島区民

龍の歯医者 特別版の豊島区民のレビュー・感想・評価

龍の歯医者 特別版(2017年製作の映画)
4.5
超絶大傑作。是非多くの人に観てもらいたい作品の一つ。
まず、TV版からの変更点としては、殺戮虫編の冒頭、現代における龍の存在に関する一連のシーンがカットされているのみで、ほぼTV版と同様の内容だったと思われる(細かいリテイクは入っているかもしれない)。個人的にはこのシーンは龍の存在を説明する上でとても重要なシーンだと思っていたので、カットされたのは少し残念だった。
設定や脚本の作り込みは凄まじく、元々10分足らずの短編から端を発した作品とは思えない作り。舞城王太郎、榎戸洋司という存在の大きさを改めて思い知らされた。
キャラクターデザインも、最近の作品にありがちな特定の層にアプローチをしていくコンセプトではなく、老若男女問わず、幅広い層に観てもらうための工夫がされているので、是非多くの方に観てもらいたい。
劇場版における大きな違いとしては音響が挙げられる。この為に再調整が施されているということで、映像の緻密さと相まってスクリーン映えする出来栄えとなっている。
本編に関しては、「少女は選んでここに来た。」、「少年は選ばれてここにいる。」のキャッチフレーズがこの作品の全てを物語っている。自らの意思で龍の歯医者になった野ノ子、大人達の戦争に巻き込まれた結果、龍によって見出されたベル。この二人の対比の物語である。物語の軸は非常に単純ではあるが、設定の複雑さと相まって、受け手の理解の仕方によって異なる解釈が生まれることがこの作品の特徴であり、魅力である。ただ、単純に作品のキャラクターやストーリーをコンテンツとして消費していくのではなく、人生という過程を語るべき物語として成立させている。それがこの龍の歯医者の素晴らしい点である。
昨今のキャラクターコンテンツ化したアニメ作品とは明らかに一線を画した作品であり、後世に残していくべき傑作である。
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