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とんかつDJアゲ太郎のMSTshoziのレビュー・感想・評価

とんかつDJアゲ太郎(2020年製作の映画)
3.8
原作を夢中になって読んだ。

そのキャラクタの活かし方も、その扱いも、渋谷にあるトンカツ屋の説得力も、キャストや小道具、その積み上げで見事に表現できていた。
ストーリーラインもわかりやすく、キャラクタの掘り下げもよい。親父同士の酒盛りとか…。

そのなかで、DJというものの魅力、難しさ、この辺がもう少し伝わればなとも。キャッチーな音楽や演出で見せるのではなく。

結果としての主人公の変化を、手際(店での動き、レコードの取り扱い)で見せるのは視覚的にわかりやすいし、コンパクト。

ただそこに至る道筋が原作のキモだと思っている。

原作の魅力はとにかく、主人公が、とんかつとDJ、この二つ、彼にとっては仕事と趣味、全く相入れないと思われるこれらの相互作用を自分の中で起こしていくこと。
それが彼の中で確固たるものとして他人に認められていく。
この点のストーリーラインが決定的に足りない。世界観やキャラクタが突飛なものにならないよう、導入を丁寧にし、キャッチーな作りにしているからこそ尚更に。

唯一欠けているもの、それが原作の面白みの根幹であるのが残念。
それ以外がよくできているだけに尚更に。
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