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お星さまのレールのmhのレビュー・感想・評価

お星さまのレール(1993年製作の映画)
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38度線の向こうで終戦を迎える。混乱の中、帰国を目指した家族のアニメ映画。
ひと昔前の国民的女優小林千登勢が自らの体験を児童文学にしててその映画化。
中国残留孤児の帰国事業のニュースを小林千登勢が楽屋で見ているところからスタート。幼少期に思いを馳せるという構成。
満州や朝鮮などいわゆるガイチから引き揚げる際の苦労は、文章では割とよく目にするんだけど、映像のほうはほとんど見ない。
暴行や強姦などのひどい話が多い中で、この映画のような、それほどひどくないけど、かなり大変だったというタイプの話は少なく貴重なのでありがたい。
お尻にマチ針が刺さるくだりは、ほんとにあったことなんだろうね。懐いていたお手伝いさんとのお別れにもなるし、主人公の通過儀礼にもなってるしで完璧なプロットだった。
三十八度線を目指してきて、それを乗り越えてクライマックス。SEで犬の鳴き声とか銃声とか入ってるけど、絵にはなっていなかった。緊迫感を高めるという点では音響監督GJなのかもしれないけど、やっぱここは、目に見えない線を越えるという空虚さとか、戦争の無意味さを強調させるほうが良かったんじゃないかなぁ。
なによりこの映画のいちばんのポイントは、左右どちらにも偏っていないこと。戦争映画は、その企画段階で左右どちらかに傾いているものなので、ここまで中道だと、逆に何がしたいのかわからないという不思議な心地になった。
ローテンポでかったるいと見るか、丁寧で感情移入しやすいと見るかで、印象変わりそうだけど、いまなら倍速再生もあるしね。
しっかり楽しめて、思いの外、面白ろかったです。
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