ウィンチェスターハウス。それは今もカリフォルニアに現存する屋敷である。
ウィンチェスター銃で財をなした夫の事業。その銃によって殺された多くの人々の霊のため、未亡人のサラが1884年から38年間もの間、24時間全く休むこと無く計画性もなく増築を続けたまるで迷路の様な幽霊屋敷。
それを題材にした映画。
物語は1906年。とある豪遊する精神科医エリックから始まる。彼のもとにある男が訪ねる。未亡人サラ・ウィンチェスターがなにかに取り憑かれて家を増築していると。ウィンチェスター社の筆頭株主である彼女の精神異常を理由に理由に、株主の権限を奪おうという魂胆だった。
その依頼で、ウィンチェスター家を訪れたエリック。霊的なものに懐疑的だった彼は、家のものの目をかいくぐり、調査にのりだすが、奇妙な出来事は段々と彼の精神を揺るがしていく……
何者かに取り憑かれた少年、怪しげな現象、不可思議な家…
そして、その謎は彼の闇の根源にも…
俳優陣が印象的。黒いベールを開けた時のアカデミー賞女優であるヘレン・ミレンの老いてもなおの美しさにはドキリとさせられ、サラ・スヌークの不可思議で闇のある表情なども魅力的だった。
が、正直に言うと、ホラー映画としては面白みにかける。霊的演出も微妙だし、その点では何も心には残らない(笑)
期待していた幽霊屋敷の具体的構造もあまり見れず少し残念。もっと見せて‼‼ それでも、やはりすごい建物だなと心ときめく。
しかし、この映画が伝えたかった事は、銃社会への啓蒙なのかもしれない……
アメリカの短い歴史の中で、「銃」という存在は深く根強い。
侵略・奴隷制度から始まり、銃というものはアメリカ社会を支配している。
余談になるが、全米ライフル協会がどれほどの力を持っているかご存知だろうか。どれほどの支援者がいるか。どれだけ政治に関わっているか。幾度となく銃規制の運動があっても、それが全て押し殺されているか。
その理由は、開拓民として自分の国を作った武器であるという事もあるけれど、1番大きいのが“強迫観念”。自分たちが殺 してきた過去、つまりは原住民や黒人と、その報復への恐怖による強迫観念から、アメリカは銃を手放す事が出来ないのだ。
差別し迫害し殺しまくってきた人々、私利私欲のために殺 してきた人々、その恐怖から、今のアメリカの銃社会がある。非常に深い問題…
この映画は、一見して、増築される恐怖屋敷を描いたように見えるが、西部開拓で活躍したウィンチェスター銃によって亡くなった被害者からの“強迫観念”を描いたものであり、過去の事を描いているが、アメリカの銃社会を揶揄するものだったのでは、と私は思う。
家を増築し免罪を続ける狂信的なサラは、とった行動の方向性は違えど、銃による“強迫観念”に苦しめられてきたアメリカ人なのだなと。
と、考えたら、この映画が面白く感じた。この屋敷が迷宮なように、“贖罪”と“強迫観念”によりまさしく抜け出せないカルマなんだなと。
しかしながら、あまりに奇妙な現実は、作り物の物語ではそれを超える事は出来ない。彼女が生きている間作り続けたこの家の奇妙さと魅惑さと謎は、その事実だけで永遠に語り継がれるだろう。
余談。当時の調度品にはいつもながらときめくのだが、今回はアヘン用のガラス器具とその使用風景がウハウハした♡