見応え抜群の半実話。ひりつくような感情を演じるミシェル・ウィリアムズに肩入れしながら物語をスタートさせる。
しかしだんだんと他のキャラクターを知るにつれ、人間の複雑性に心を奪われていった。誘拐犯側のチンクアンタ演じるロマン・デュリスもどんどんいい味出してくるし、ケチ富豪ゲティの寂しさや虚しさも理解できてくる。
このクリストファー・プラマーがすごい。完全に嫌な奴なのに「悪役」にならない演技。ゲティはお金持ちだから、身代金を払って当然だという目でずっと彼を見続けてしまうが、それは彼の義務ではない。ゲティの気持ちは誰にも語られない。
実際のゲティがどんな人だか知らないが、この映画の中のゲティは、とても人間として魅力があった。
