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THE UPSIDE 最強のふたり/人生の動かし方のjamのレビュー・感想・評価

3.9
DNR…Do Not Recovery
もしも呼吸停止などした場合に、延命処置を望まないということ

若い患者さんや、病状がそこまででない患者さんにはあまりしないものの
高齢の患者さんや、重篤な病状の方の場合は、必ずと言っていいほど許可を取る

私たちが良く使う、No CPRとほぼ同じ…心肺蘇生を行わず、自然に死を迎え入れること


オリジナルは観ていません
この作品も、劇場予告を散々観たため、
すっかり本編を観たような気分になっていて
むしろ、観なくてもわかる、と思うくらいになっていて。

けれど、敢えて鑑賞したのは
脊損の患者さんの心理状態が
常々気にかかっていたから

脊髄損傷は、言うまでもなく生まれつきではありません。多くは不慮の事故によって、ある日突然、自由を奪われるのです。
そして、大抵の場合、頭はクリア。

そう、意識はこれ以上ないくらい清明なのに、自分の意思で体を動かすことが出来なくなる…
健康な私たちには想像もつかない苦しみや悲しみがあるのです。


大富豪のフィリップはパラグライダーの事故で首から下が麻痺した状態
人の介助なしではほとんど何も出来ない
そんなイライラもあって、前任の介助人を解雇してしまいます。

後任に選ばれたのは、前科者で介護経験ゼロのデル
フィリップの片腕、イヴォンヌをはじめ周囲の反対を押し切り、彼を採用したのはフィリップで…


型破りで常識知らずのデルが、徐々にフィリップのことを理解して彼なりの"介助"をしていく。その過程で二人の間に友情が芽生えて…

展開としては先が読めるので、あまり驚きはないのです。随所にクスリとするエピソードや心に滲みるくだりがあり、ほっこりします。
それと、予想もしていなかったオペラの使われ方
アレサ・フランクリンの"誰も寝てはならぬ"にニヤニヤするのが止まらないです。


そして、最も関心のあった脊損患者の心理


私の人生には、自分で管理できるものがない
せめて一緒に過ごすのは自分が選んだ人と

妻を亡くして、その上自身も不自由な体になったフィリップの孤独


彼が望むのは、DNR
それ以上、人の手を煩わせるのを拒む心

重く、深く沈みこむ

ラストは予想がついていたけれど
救いがあってほんとうに良かった…
jam

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