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ある少年の告白のgnspのレビュー・感想・評価

ある少年の告白(2018年製作の映画)
5.0
信じ難いような人道を踏み外した行為をしても、「彼ら」はいとも容易く「神の子に戻ろう」と口にする。
極まったキリスト教(つっても宗派によるんだが)はカルトでしかないってのは「ウィッカーマン」でも描写されていたが、
この問題がまさに今現在のアメリカで起こり続けているという事実。
壮絶。


あの狂った空間が結果として彼の才能を「開花」、というより「解放」させることに繋がったことで、青年の成長譚としても成立させる見事な構成。
回想の入りかたもなかなかにスムーズでスマート。

「教え」に狂ったセラピストを監督自らが演じているのが凄まじい。表現したいことと逆行した思想を持つ役を演じるなんて、相当に頭の切り替えも回転も出来る人なんだなと。
そして終盤のラッセル・クロウの名演には涙。「父」としての顔が強いけど「聖職者」として守らねばならぬものとの葛藤もあり…複雑な思いで噛み締める一語一句の演技。
ただ一方で、「抑圧」の対象がLGBTだけじゃないことをある展開で鋭く指摘している。

最後の最後に示されるあまりに恐ろしい事実には鳥肌。


原作の回想録が出版されてもなお、「矯正」施設に子を入れる親は大勢いる。
何のために親は子をこんなところに入れるの?その親心の根っこはなに?
主人公の父親はいつもはフォードのディーラー、日曜は牧師と、まさに「田舎の成功者」だった。この設定には間違いなく示唆するものがある。


しかしこの話も「いくつもある"真実"のうちのひとつ」であることを忘れちゃいけない。
この作品を受けて我々がすべきは、
内容全てを鵜呑みにして、同性愛「矯正」施設を人権に反する!と糾弾する(ことも必要かもしれないが、それ)よりも、
大切な人同士で、それぞれが抱える問題を受け容れ、支え合っていくことなのではないだろうか。
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