亜硝

ホテル・エルロワイヤルの亜硝のネタバレレビュー・内容・結末

ホテル・エルロワイヤル(2018年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

中央に線が引かれた印象的な舞台……
集いしはどこか謎を秘めた登場人物たち……
なんて面白そうなんだ……
そして実際、前半はめちゃくちゃ面白いです

ショットガンによる射殺事件を繰り返し様々な人物の視点から描写する所とか、歌の手拍子で床板を外す音をカムフラージュするあたりはグランドホテル形式の作品の中でもかなり出来が良いのではないでしょうか!交錯する登場人物たちの動きを整理しながら脳を使って観るのが楽しかったです。「このキャラがこうしてる時に壁の向こうではあのキャラとあのキャラが揉めてて……」みたいなのを想像するのが群像劇の醍醐味の一つですよね。本当に良くできてるんですよこれが。

マジックミラーから客室を覗いていたホテル管理人。神父のふりした銀行強盗。セールスマンのふりした潜入捜査官。どんどんウラの顔が出てくるところも気持ちよくてグイグイ引き込まれました

……しかし後半、敵の親玉(クリヘム)が入場してから一同が全員ロビーに集められちゃうとまずそういった楽しさが一気にぶっ壊れ、急に出来の悪いヘイトフル・エイトみたいになってしまったのがつらかったです。伏線が回収されるでもなく、小物臭がプンプン漂うあんまり魅力のない親玉が主導権を握って場当たり的に物語が進んで行きます。脚本家途中で変わったの?ってくらいひどいですよ。オラ!!!クリヘム!!!腹筋綺麗に割れてるのはわかったら早よ出て行け!!!って心の中で叫び続けてました……

ルーレットで生殺が決められるところのサスペンスとか「何人殺したの?」の質問に「123人」と返すのが予想外に多すぎて笑ってしまったし、そういう細かい良さはあるんだけど、受付のボーイが実は帰還兵でした、と急に活躍するのは布石も全然上手く敷けてないし、ましてそのことをギャグならまだしも大真面目に演出しようとしてるのがかなりアホくさかったです。ホテルが2州にまたがってるっていういかにも象徴的な舞台設定が結局最後まで生かされなかったのも流石にどうかと……

前半の感じで最後まで行ってくれたら……くれたら!!!!と切に思いました。こんなに落差が凄まじい映画も久々に観ましたね……でも前半は!本当に素晴らしかったです、本当に!一見の価値ありですよ。
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