Ryan

暁に祈れのRyanのレビュー・感想・評価

暁に祈れ(2017年製作の映画)
3.9
暁に祈り、己の場所をみる。



ストーリー
イギリス人のボクサーが、人生の再起をかけてタイを訪れる。しかし彼は麻薬中毒になり、刑務所に収監されてしまう。劣悪な環境の中、獄中でムエタイと出会った彼は、囚人選手となり仲間と共に立ち直っていく。


主演 ジョー・コール
監督 ジャン=ステファーヌ・ソヴェール


自伝『A Prayer Before Dawn: My Nightmare in Thailand's Prisons』原作。

批評家から絶賛された名作。
個人的にニコラスウィンディングレフン監督作品を観て育ったため、今作はドストライク。
とんでもなく素晴らしい作品である。

映画を観ているようで観ていない。
息遣いや波打つ心臓、己が世界の中心にいるような歓声と罵倒、無差別に繰り返される暴力の中で生き残るために己を守るためにこうするしかなかった男。全てに対して"生きる"が伝わってくる。
本能的何かに訴えかけるそんな力がある。

顔面クローズアップが多用される事により、見せすぎないボクシングスタイルや表情の変化が細部まで画面いっぱいに映し出される。
まるで演技において逃げ場がない。
タイ人の中に1人白人がいるだけで目立つのに終始彼の演技は落ち着く事なく荒々しく細部までビリームーア(原作者)の感情が伝わる。
そして、ラスト。
この余韻たっぷりに線上に残すスタイルが映画としても演技としても抜群に上手い。
カンヌ映画祭が大絶賛するのもわかる。

今作の主演ジョーコールの役作りと圧倒的な演技は間違いなく名演と呼ぶに相応しいだろう。
今作は実際に存在する刑務所で撮影され、元囚人をキャスティングするなど本気度が伺える。その甲斐あってか唯一無二な存在としてこれからも映画史に残り続けるだろう。
Ryan

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