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暁に祈れのgunner16のネタバレレビュー・内容・結末

暁に祈れ(2017年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

タイでボクシングをやりながら生活費を稼ぐビリーは、麻薬所持のため警察に逮捕されてしまう。そこは地獄のような場所だった…

主要キャスト以外は元囚人、撮影場所も実際の収容所と、リアリティを追求した映画となっている。視聴者がその場にいるかのように錯覚するほど、不快感があって清潔感のない映像が続く。そのなかでタイ語の会話にあえて字幕をつけない演出が光る。視聴者は、ビリーの周りの囚人が何を言っているのかわからず、ビリーと同じ不安感と焦燥感を味わうのだ。中盤以降は物語に字幕がつくようになり、ビリーがこの地獄の環境に適応し、またタイ語を少し理解できるようになったのであろうと、ビリーの強さがうかがえるのもまた良い。

ラストには、ビリーが病院を抜け出し、先の見えない線路道で立ち尽くした後、最後はおとなしく病院に戻ってくるシーンがある。病院を抜け出したのは現実なのか、夢だったのか。なぜビリーは立ち尽くしてしまったのか。答えは見えないが、少なくとも彼は罪を償うために再びあの地獄へ戻ったのだ。彼の強さには賛辞を送りたい。

ビリーがイギリスからなぜタイに渡ってきたのか、またなぜ麻薬に手を出すようになったのかがはっきり描かれているとより物語に深みが生まれたであろうことが少し残念。
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