日向日向

劇場版 ウルトラマンジード つなぐぜ! 願い!!の日向日向のレビュー・感想・評価

5.0
僕らはみんなでウルトラマン

これはウルトラマンジードの完結作でもあり、ウルトラマンオーブの完結作だと断言できる。
テレビ放映で一旦はジードこと朝倉リクの物語は幕を閉じた。そして今作は、その後の最後の進化を描く作品である。
強力な先輩の元でヒーローとしての経験を積み、一人前のヒーローになったからこそ始めて訪れるプレッシャーに朝倉リクは直面する。
だが、そこには信じるべき仲間がいる。だからこそ、戦えるようになる。
そんなヒーローとして大切な話をどストレートに伝えてくるわけだ。

今回の敵はまたもギャラクトロンである。初登場はウルトラマンオーブであり、現れた目的や誰が送ったのかが不明であったが、ここに来て判明する。正直な話、ウルトラマンコスモスのカオスヘッダーと酷似しているがそこはいいだろう。
ギャラクトロンのボス(?)であるギルバリスの襲来を告げる役に、前作オーブの宿敵ジャグラーがリクたちの前に訪れる。
個人的にはジャグラーは好きなのでそれだけで堪らない。
時に厳しくリクに当たるジャグラーだが、しっかりとヒーローとしての在り方を指導するその様は、光の戦士ではないが、ウルトラマン先生といっても決して過言ではないだろう。
ジードでも似たような敵として伏井出ケイなる人物がいたが、彼は中途半端な悪者だったので、そういった点でもジャグラーは本当に名キャスティングだ。

また、今回の敵、ギルバリスも予想外によかった。
その場に据えて、ひたすらと攻撃を進める様は『ウルトラマン物語』にて初登場し、今も人気なグランドキングであるし、最終決戦のフィールドなどはウルトラマン80のメカギラスを彷彿とさせるものがあった。

今作は、各キャラの活躍に短い尺を割いていることが目立つ。しかし、それは決して悪いことではなく、皆がウルトラマン、皆が朝倉リクを信じている演出を助ける役割を担っているのだ。その地道な準備が、最後の朝倉リクの決意、「僕らはみんなでウルトラマン」という言葉にいきるのである。
そして、満を持してジードの主題歌である『GEEDの証』が流すものだから、ついぞ落涙を禁じえなくなってしまった。
子どもからすると少し難しいテレビ版とは対照的な単純明快なヒーロー像の描写を徹底しており、これこそ日本が誇るヒーローのあるべき姿であり、誰もが見るべきヒーロー映画なのである。

純粋に楽しめる映画とはこのことである。一本の映画としても独立しているし、ジャンボットとの絡みなど、もうウルトラマンを卒業した人でもニヤリとさせられる。
そして大人も侮ることなかれ。
今作テーマ曲の『絆∞infinity』でも何度も綴られているように、私たちが忘れかけていた絆の力が持つ無限の可能性を思い出させてくれる作品でもあるのだから。

やはり、円谷プロは本当に面白い作品を送り出す。当初は予算の少なさが問題視されていたが、それでもなおこの水準を叩き出してくる。
本当に日本のヒーロー特撮は他の国のヒーローものの追随を許さない不動の地盤、底知れぬ爆発力があると確信できる作品だった。
日向日向

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