「ヒーローはなぜ、僕の心をつかんでやまないのか。」
ここで、昔話をしよう。
17年前、僕が彼に出会った夜のことだ。
親に連れられて、僕は立ち込めるポップコーンの薫りに出迎えられ、夜のスクリーンと対峙した。
赤と青のスーツに身を包んだ彼が、スクリーンの中を縦横無尽に飛び回り、親愛なる隣人とMJを守るために悪戦苦闘する様は、幼心の僕の心をガッチリ掴んだ。かっこいい!!そう思ったのを鮮明に覚えている。
僕の初めてのヒーローが、彼だったんだ。
そんな彼も、今日、死んだ。
悲しいけれどホントの話だ。
そして、再び、今宵彼は蘇った。
そのマスクを、スーツを、意志を受け継ぐものたちによって。
さて、ヒーローは、なぜ僕の心をつかんでやまないのか。
僕はなぜ、ヒーローに心つかまれてやまないのか。
スーパーパワーがあるから?
違う。
コスチュームがかっこいいから?
それも違う。
人の身でありながら、強敵に挑み、失い、傷つき、悲しみ、迷い、恐れ、不安と闘ってきた。もう何年もだ。
けれど、彼は決して諦めなかった。
地に這いつくばろうとも、最後は必ず立ち上がる。
前に向かって進んでゆく。
僕は、そうした“生き様”に憧れてきたんだ。
自分もああなりたいと、憧憬を抱いたんだ。
この物語は、誰もがスパイダーマンになれると伝えてる。
それはきっと、スーパーパワーが人をヒーローたらしめるのではなく、その人の生き様こそが、人をヒーローたらしめるのだと伝えているのだ。
ありがとう、親愛なる隣人、スパイダーマン。
この物語は紛れもなく、僕と君のオリジンストーリーだ。