鰹よろし

ホステージXの鰹よろしのレビュー・感想・評価

ホステージX(2017年製作の映画)
2.5
 国外(国際)問題及び自国の利益のために活動するCIAが豪語する。

「どんな人間だろうとアメリカ人であれば助ける!!」

 ん? どっかで聞いたことあるぞ?


 異国の地で言葉も通じず何も明かされず捉えられ続ける記憶喪失のとある男。これだけで考えれば彼が被害者であると真っ先に思い浮かぶ。救うべき対象であると。

 閉じ込められた小屋が家畜小屋(馬小屋)だったり、餌をやったり地面に書いた番号を消したりとやたら山羊を印象付けるのも彼の見え方というところでいろいろと狙っているのだろう。

 そんなところを鑑みると、アメリカ人であればどんな人間だろうと助けるとする捜査官の言葉が、信じる者は救われる…ただ信じるだけで良いのですとする甘いお言葉のお誘いと同義に聞こえてくる。

 お人形さんを片手に銃をぶっ放す少女の存在が本作のキーか。彼女の一見危険な行動の数々は無知故…いや無垢故ととれる。幼子のようになりなさい…と誰かは言った。彼女はそういった象徴なのだろう。山羊の他にも犬や鼠といった動物を描き出しているのもそのためか。

 人形と銃とを天秤に掛け最終的に人形を手に取る少女に対し、ヴァイオリン奏者であった罪無き少女に、人を殺すという確かな動機の下(男根を撃つために)銃を握らせた男の罪深さの訴えを、何も状況がわからない中で、捉えられた男をどう見ていたのかという鑑賞者の都合の良い解釈ができてしまう視点を鑑みるのはもちろん、まるで神かの様な振舞いの大国アメリカへの皮肉を交え、復讐を完遂する1人の少女で描き出す事で、人が人を裁くことの罪深さもまた問いかけている様に思う。
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