15の夜
-----------
すごい…なんだ、この痛みは。
この表情は。
本当に、これが15歳の演技か。これほどまでに、光を消せるのか。これほどまでに、つらさを伝えられるのか。これほどまでに、普通に泣きながら鼻水を垂らせるのか。すごすぎる。
吃音の主人公、志乃を演じた南沙良。彼女は完全に想像を超えていた。新垣結衣の、そして「のん」もフミカスもいたレプロエンタテインメントにこんなコがいたなんて。角度によって、「のん」にも「岡山の奇跡」にも見える瞳。素晴らしすぎる。
でもコレ、内容的には確信的にベタなシナリオ。
そして、本当に大好きなやつ。
まずは、先生のクソ野郎な描き方がグッド。
少しの勇気で世界が変わる?がんばろう?
はあ、そんなん要らねえんだよ。がんばらなくっていいんだよ。そのままのきみでいいんだよ。話ができなくったって、そんなんどうでもいい。きみの好きなことで、絵でうたで音で、いろんな趣味で、好きなことで自分の表情を見せればいいんだ。ブルーハーツが好きなギター弾きの音痴の加代ちゃんみたいにね。
加代ちゃんがペンとメモを渡してきみに言ったことば。
「しゃべれないなら書けばいいじゃん」
ああ、形を変えた「聲の形」
そのセリフとやさしさは鋭く激しくキツすぎる。
でも、志乃ちゃんもそんな可愛い顔して丸文字で描いたことばがアレでは、どストレートすぎておとうさんは反応に困る^^:
アコギを引く加代ちゃんをみる志乃ちゃんのうれしそうな瞳。せっかくアコギを弾いてくれた彼女の音痴さに苦笑し怒らせた自分を責める泪。素直な喜怒哀楽に惹き込まれる。
ギター弾きの加代ちゃんを演じる蒔田彩珠。彼女も良かった。さすが是枝作品の常連だ。この若さでとても雰囲気がある。
いつも教室の外を見てて、同級生のアホの子から「岡崎って、なんでいつも怒ってんの?」っ言われるシーン。これは、高校時代のOZAKIのエピソード。オマージュかな。
おまえらには、あたしのことなんかわかんねーよって想ってる内面のね。キツイ性格の彼女がつぶやく、笑ったら殺すよ、死ねばいいのに、のセリフも、この世代のストレート。
しかし南沙良はこんなにイイこえをしていたのか。
マジに「志乃加代」で歌い続けて欲しくなる。
女の子のうたう「青空」を聞くと泣きそうになる…
彼女たちが失くしていた大切な何かを、うたを通じて取り戻す姿。その瞬間にしか無い光。「小さな恋のうた」と同じ蒼くせつない煌きを見せつける。
海風が髪を揺らす屋上も、ひとりぼっちの校舎の裏も、きみたちの居場所だよな。屋上から見えるきれいな海や橋、港の風景もいい。とても、きれいだ。
南沙良も蒔田彩珠も、このときは15歳の等身大。全てのいろがリアルすぎる。
このコたちは、本当にすごい。こんな宝物たちがいたなんて。とくに南沙良。彼女は、きっと間違いなく今のトップの姫たちを脅かす存在になる。きみには、魔法がある。
ゆるーく待ちつつ期待して見守りたいと思う。きみのタイミングで、自分のことばで、言いたいことを伝え終わるまでね。
「もみの家」や「太陽は動かない」も楽しみだ。いろんな物語がきっと君をまっている。
………。
そうして、あれから時は流れて…。
私もここに流れ着いて…。
今日、20歳になった彼女が冬の定番キャンペーンのヒロインになっているのを知った。少し大人になった瞳。キミたちの世代には、顔を突き合わせてみんなとワイワイ騒げる時間が無かったよね。薄い布が妨げる絆。
だから、だからこそ、そうなんだ。
【冬を取り戻すんだ。】
ようやくここまで来たかー。未来を信じて良かった。
これだからやめられない。
いつだって答えは 遥か彼方にある
それが映画なのだから。
STAYGOLD@ぴあ映画生活