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未来のミライのYOUのレビュー・感想・評価

未来のミライ(2018年製作の映画)
3.7
細田守が監督・脚本を務めた、2018年公開の長編アニメーション作品。
細田守監督が手掛ける長編オリジナル作品の第5作目となる本作は、細田監督初の単独脚本作品でもあるそうです。まず先に私自身の細田作品に対するスタンスから申し上げますと、もちろん毎作楽しく拝見しつつもこれまで劇場で鑑賞したことは一度もなく、ファンと言える程の思い入れや期待も特に抱いてはいません。何せ『未来のミライ』を今頃観ている私ですから、まずは本作の世評の低さにもの凄く驚きました。何でも細田作品のファン程今回の出来にはひどく落胆したそうですが、私自身は本作も十分楽しめました。多くの否定的感想としてまずは「思っていたのと違う」というのが大きいそうで、確かに代表作『時をかける少女』や『サマーウォーズ』のようなスケール感やポップさ・キャッチーさには欠けていますし、何よりこのポスターとのギャップがかなりマイナスに響いているのではないかと。また本作の主人公・くんちゃんのキャラクター造形やファンタジックな物語は監督ご自身の息子さんから着想を得たそうで、全編通して描写される彼の幼児的言動を好意的に受け取れるかどうかが最大の評価の分かれ目だと思います。ただ個人的には普通の4才男児に一般常識や正当性を求める方が詰まらないと感じてしまいますし、何よりこうした幼児のわがままや反抗的態度、言ってみれば「子供の可愛くない姿」をあえて強調して描いている本作は、『おおかみこどもの雨と雪』に続き「子育てに対する心構え」を若者に向けて提示するような一作にもなっていると思います。加えて本作では「一軒家のデザイン」も非常に印象的でした。階段の異常な多さやコンクリートの壁などからも全体的に”やたら角張った硬い質感のデザイン”、更にはくんちゃんが完全自由に遊べる唯一の場所が「四方を完全に囲われた中庭」だったりと、我が子への深い愛情は「かえって子供から自由を奪ったり、抑圧し苦しめることにもなりかねない」というその危うさをこの一軒家が既に象徴していると思います。前述した「子供の可愛くない姿」の演出と合わせて、やはりこの作品からも「日本の児童虐待」に対する明確な問題意識が感じ取れました。くんちゃんの両親だって今後そうならないという保証はどこにも無い訳ですし、これはまさに2児の父となった今の細田監督だからこそ描くことが出来るよりリアルで今日的な批評性の部分でもあります。

特に終盤以降展開されるスペクタクルなシーンに関しては色々と疑問や違和感も浮かんできますし、それも含め細田監督のフィルモグラフィでもここまで「全てが明かされない作品」は本作が初めてですよね。ただ個人的に本作は単なるSFファンタジー巨篇というよりは、”子供ならではの自由で豊かな発想力・想像力から発展させた寓話”というニュアンスが強い一作だと思います。だからこそ今回はほぼ全編が主人公主観で語られますし、劇中における数々の体験(=子供の成長)を「大人である我々観客はどう受け止め、どう意識を変えていくか」が本作からの最も大きな問い掛けではないでしょうか。確かに事前に予想していたような作品ではありませんでした。しかし毎作その都度自身の作家性を爆発させることで日本アニメ映画界のトップに上り詰めた細田守が「事前に予想出来るような作品」を作る訳がありませんし、多かれ少なかれ良い悪いにしろ「思ってたのと違う映画」に出会う為に自分は日頃から映画館に通っているのであって、むしろ本作を観たことによって細田さんの打ち出す世界観や独自の作家性にも本格的に興味が湧いてきました。これは『竜とそばかすの姫』もちゃんと観に行かなければ。



























































































































ちなみに僕は『仮面ライダーブレイド』のカッコいいバイクのカーブを真似してるうちに補助輪が勝手に外れてそのまま自転車に乗ることが出来ました。
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