ゆっけ

未来のミライのゆっけのレビュー・感想・評価

未来のミライ(2018年製作の映画)
3.5
細田守監督映画。3年おきの夏の楽しみです。

『時をかける少女』→恋愛(時間旅行)
『サマーウォーズ』→家族(壮絶バトル)
『おおかみこどもの雨と雪』→母親、子育て(子どもたちの成長。ほのぼの)
『バケモノの子』→父と子の成長(自身との闘い)

賛否両論ある監督作品。自分は今まで全部大好きでした。
そして、今回の『未来のミライ』というと、、、、


ごめん、好きくない!!

今回は、祖先からつながる家族の今が描かれているのですが、くんちゃんという4才の男の子が、兄として受け入れる成長を描いた、かなりミニマムな日常を描いた話で、起承転結もないに等しいストーリー展開なのですが、ところどころファンタジーちっくで、コメディ要素もありつつ、近未来SF、そして最終的にはホラーになるというなんとも不思議なチャレンジングな映画となっていました(どっちつがずなイメージ)

くんちゃんが、妹のみらいちゃんが生まれて、自分を蔑ろにされて、ふてくされ、両親への愛情を薄くなってきたことに対して不満(嫉妬)を持ちつつも、過去からつながる家族の歴史をみることによって、今自分がいる”点”を回帰してちょっと成長するというストーリーにはなっています。

だけれども、映画的なエンタメ感がないので話がどうもつながらず、伏線というか、一つ一つのシーンに意味がなく、最終的な映画的なカタルシスさがなく面白みに欠ける単調な映画になっています。

何よりも、主人公であるくんちゃんにいらついてしまう。4才の男の子ってそんなもんなのかもしれないですけど、実質的な主人公だからこそ、どこか惹かれる魅力も描いて欲しかった(リアルではあるんでしょうけど)。あと、未来のミライちゃんもあんまり出なくて、二人の兄弟の話を期待していたのに、そこも残念。またそれといって親の気持ちにも共感できず、あんまりでした。

『おおかみこどもの雨と雪』では理想の子育てを描いた監督。もしかしたら、この映画は子育てを体験した今の監督の目線だからこそ伝えられた”現実”の子育てを描いた映画なのかもしれません。同じくらいの子供がいる親が観たらまた違う感じ方をするのかな。

不満点だけ書きましたが、良い点ももちろんあります!

ひいおじいちゃんのバイクシーンが非常にかっこ良い。ああいったシーンを撮れる演出力は文句のつけどころがありません。

またここで、くんちゃんがひいおじいちゃんに憧れを抱くことで、自転車を頑張るシーンにつながり、お父さんもまた自転車を乗るのを頑張っていたという点につながりにも、ぐっときました。

声優陣はどれも、正直いまいちなのですが、ひいおじいちゃんの声の福山雅治は素晴らしかった。めっちゃかっこいい。

他にも、近未来の東京駅の描き方が今までの細田監督とは違う、新しい試みをしていて面白いなぁと思いました。今までの過去作の要素もあったりするので、集大成的な見方もある一方、エンタメ的な誰もが楽しめる商業映画を作るというわけではなく、作家性の強い(アート的)映画も作る、その新しいことにチャレンジする試みは素晴らしい。

自身の体験をもとにした作家性や高い演出力やアート要素(建物のディテールもさすが)、その一面映画的なストーリー展開やキャクターの作り込みが弱いなぁと感じてしまいました。あの、気持ちよくて、くうちゃんがはまるあれは何??2回も。。

『時をかける少女』から続く奥寺佐渡子さんの脚本が完全にないのが影響受けているのかなと思いました。次回作は、脚本戻って欲しい。。。

最後に子供がみたら、トラウマになりそうなホラー要素もあるので注意です。劇場で泣いている子供いました。でも、あの東京駅の紛失係の人と時計のキャラクターはよかったなぁと思いました。
ゆっけ

ゆっけ