高澤奏

未来のミライの高澤奏のレビュー・感想・評価

未来のミライ(2018年製作の映画)
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毎年FMラジオから流れる山下達郎を聞いて夏のはじまりを感じる俺だが、去年の夏はこの映画の冒頭から流れる山下達郎を聞いて夏のはじまりを感じた。俺の夏はだいたい蝉より先に山下達郎が報せにきてくれる。

前作の王道バトルファンタジー『バケモノの子』とは一転、今作は四歳の男の子クンちゃんと、未来からやってきた妹ミライちゃんによるタイムスリップヒューマンドラマだ。壮大なスケールの冒険活劇を期待していた細田ファンからは評判が宜しくないみたいだが、このちんまり感が俺は大好きだし、家族の話だけでも十分にエンターテイメントだと思った。むしろこのちんまり感を壮大に描けてる事が凄い。やたらバケモノとかコンピュータウイルスの暴走を求める冒険家の視聴者には、少年革命家ゆたぼんの発言を今一度思い出してほしい。「人生は冒険や」。

この作品は映画館で見たのだが、
クンちゃんの様子を見に来た保護者面の老若男女が、劇場内にひしめき合っていて、まるで規模のでかい授業参観をしているようだった。
中には学ランで腰パンしてガムを噛んでるような不良までいた。平日の昼間だったので、多分学校はサボッたのかもしれない。
俺もよく学校をサボッて映画館に行っていたから気持ちはわかる。

そんな狂宴のなか映画は始まり、お客の神経は全てクンちゃんに委ねられた。少しでも目を離せば何をしでかすか分からないクンちゃんなだけに、冷房ガンガンの劇場でも皆が汗をかいていた。
特に、クンちゃんが泣いてる赤ん坊の頭に新幹線の玩具をぶつけるシーンでは、劇場内が一瞬で凍りついたのを覚えている。俺の左斜め前にダラしなく座っていた先程の不良でさえ、背筋が軍人なみに伸びていた。この人ほんとは優しい人なのかもしれない。
何よりエンディングロールで、不良は静かに泣いていた。
ちなみにその時流れていた山下達郎の歌詞がこちら↓
「泣きべその後で こぼれる微笑みは
どんな季節にも 新しい風を呼ぶのさ」
この歌詞を聞きながら俺は不良の未来を想った。
不良はこれからどんな人生を歩んでゆくのか。学校には行っているのか。いや、無理に行かなくてもいい。だけど家族は大切にしてほしい。やりたい仕事がなくて、YouTuberになってもいい。元気に生きてりゃそれでいい。

未来のミライについての感想文が、
不良の未来についての感想文になってしまった。

まあ、何が言いたいかと言うと
山下達郎は最高
高澤奏

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