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15時17分、パリ行きのmatchypotterのレビュー・感想・評価

15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)
3.8
実話ベースのアメリカ映画と言えばすっかり彼の18番、クリントイーストウッド。

これも2015年に実際にフランスで起きた列車での銃乱射事件が元ネタ。
この映画の1番の驚きは、話の中心になる3人のアメリカ人。彼らは実際の事件に巻き込まれた“本物の3人”。役者ではなく、ご本人、たち。色んな意味でスゴい。

この実際の事件をシーン描くのは断片的、且つ、ほんの一瞬と言って良い。
この一瞬を、この一瞬までの3人の背景と足跡をドラマチックに描く。

「何か大きな目的のために動かされている気がする」

劇中に何度か出てくるセリフであり、これがこの映画のテーマ全て。

3人は幼い頃から周りともうまくいかず浮いてる。その3人で連むようになるが、別れもある。
3人は小さな頃から“戦争”に対して思うところがある。
それは興味でもあるが、どこか自分の中に根ざす使命のような。

その気持ちを胸に大人になるが、そう簡単に軍に入って希望の職種になれたり、世界を股にかけた人命救助など、イメージ通りにはならない。

そんな矢先、休暇が取れた数日で久々に3人で集まり、ヨーロッパを転々とする慰安旅行を思い立つ。
それぞれの目的を胸に、気分転換も兼ね、自分を見直すための慰安旅行。

イタリア、ドイツ、、、とヨーロッパを転々とし、現地の人と出会い、アムステルダムを勧められたり、奔放な旅。
パリ行きについては、誰からもお勧めされず、悩んだが、最後は最初から買ってあったチケットだからと自分たちの意思を重んじる。

その最後の“パリ行き”で、その列車で、その乱射事件に遭遇する。

この銃乱射事件はイスラム過激派の男の暴挙で、本当に暴挙に出た男の進路に偶然居合わせる。

実際に怪我人が出たり、自らも負傷しながら男との格闘の末、取り押さえる。
この一連のテロ行為に対する抵抗となり、3人の男達はオバマ大統領に賞賛され、フランス政府から勲章を授かる。

「何か大きな目的のために動かされている気がする」

彼らが知り合ったこと、別れもありながら散り散りに成長したこと、不満がありながらもその中で自らの職責に全うし肉体、技術、経験を積んだこと、そして、ヨーロッパに旅行したこと、パリ行きを望んだこと。

すべて、その全てがここに繋がる。
全てはこの時のためにあったかのような一連の出来事。彼らのそこまでの人生そのものがこの時のためにあったかのような。

偶然というにはあまりにも運命的。
きっとそれぞれの経験は大なり小なり他にも役立つ機会はあったろうが、これほどに“何か”を感じるような歯車がハマる瞬間はなかなかない。

クリントイーストウッドの愛国心というのか、戦場や軍事活動に従事することの意義とその裏で背負う重責や代償の描き方。

ヒーローと言えばヒーローだが、順風満帆でめでたいあっぱれ星条旗というわけでもないが、そこで戦う現実と、本人達の光と影、事が起きるリアルな風景、そして、そこに居合わせた運命を淡々と描く。

この淡々と、ある意味普遍的で日常的な3人の男の友情や経験の積み重ねでドエラいセンセーショナルな事件と顛末へと繋げる。

そよ風の連続で台風にまで成長する、そんな“バタフライエフェクト”みたいな効果を感じる映画。

『ユナイテッド93』みたいな一瞬であり最大の緊張感までの道筋。全てはこの時のために。
恐ろしくスキもなく、無駄もなく、全てが繋がってる映画。


F:1903
M:45637
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