頭の上の赤い林檎

15時17分、パリ行きの頭の上の赤い林檎のレビュー・感想・評価

15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)
4.0
 実際の事件を再現したサスペンスというよりも、実在した3人の人生にフォーカスし、現代での軍隊の実情にも迫ったノンフィクションといったテイストのドラマ。

 ヨーロッパ旅行の様子も結構な尺を割いて描かれているので、トリップムービーとしても中々面白い。

 今作では3人の中でもスペンサーに特に焦点が当てられており、彼の不遇から表彰までのサクセスストーリーとして個人的には印象深い。

 ただ、その手段として選んだ軍隊。軍隊に入り、国のために命を賭ける。尊敬されるべき、模倣できない素晴らしい職である。ただ、それが正義とされ、目指すべきゴールとされるのも中々酷というか、もやもやするものを感じてしまうのも事実。スペンサーは単独テロ犯を取り押さえ、人命救助もし、かけがえのない成功体験を手に入れた。しかし、そのどこか一つでも間違っていれば命を落としていた。アレクだって任務中何度も危機に陥っていた。

 戦争を無くすことを建前とする現代で、武器を捨てることのできない、綺麗事では語れないリアルを今作で垣間見たように思う。その絶妙なリアルさを描くのがやはりイーストウッドは素晴らしいと思う。

 大変満足でした。