イーストウッド監督の実験映画
お得意の英雄譚を更に発展させた形で提供してくれる。
フラットな作風が特徴だと思っていたが今作はドラマチックなつくり。現実とノンフィクションの境目が曖昧になった代償だろうか。結果としてどこかチープさが残る。(明快な伏線、聖書からの引用、意味を持たないフラッシュバック、不要なボイスオーバーなど)
後半では巨匠の力を見せつけた。テロリストとの戦いを描いたシークエンスでは力のあるカットイン、生々しいカメラワークを巧みに使いこなし一気に観客を引き込む。
そしてイーストウッドお馴染みのラストを迎えるわけなのだが、ここがかなり挑戦的。作品が現実に介入してくる感覚、これはほかのノンフィクションでも味わえない感覚だろう。
テロとの戦い、一般市民の勇気ある行動を取り扱った作品だがただ取り扱ったにすぎない。イーストウッドはこの映画で表現の新たな境地を目指したのだ。
