ゐ

15時17分、パリ行きのゐのネタバレレビュー・内容・結末

15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

イーストウッドらしいなと思った。特殊な構成とリアリズム。起承転結でもなければ、序破急でもない。まるでジグソーパズルをやっているような感覚だった。完成形は予告映像で既に知っている筈なのに、いくらピースをはめても全体像が一向に見えてこない。
かなり後半になって、やっと「パリ」というワードが出てきたと思ったら、早かった。今まで生い立ちは全て必要なピースだったのだと分かって、戦慄した。見事な構成。

悲劇の魅力は、ifの世界を想像してしまうところ。もしヨーロッパ旅行中にバーでおじさんにアムステルダムを勧められていなかったら?もしスペンサーの店に海軍の人が来てなかったら?いやそもそも、もし幼少期にお母さんが先生の意見を聞き入れて、彼らを落ち着きのある子に育てていたら?一見テロとは何の関係もないように見える日常的なシーンも、重要な意味がある。今までの彼らの人生全てに特別なものを感じる。
突発的な行動力も、それに伴うパワーと正義感も、応急処置の知識も、アムステルダムからパリ行きの電車に乗ったのも、全てこの瞬間の為に不可欠なことだった。一つのピースでも欠けていたら、この奇跡は完成しない。まさに運命の導きとしか言いようがない。
ラストの授賞式の映像、自分が映画館にいるということを忘れてスタンディング・オベーションしそうになった。
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