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人狼ゲーム インフェルノのJIZEのレビュー・感想・評価

人狼ゲーム インフェルノ(2018年製作の映画)
4.3
謎めいた保養所に集められた同じクラスに集う10名の高校生たちが生還を賭けて投票で命懸けの心理戦へ身を投じていく結末を描いたシリーズ第7弾‼鑑賞後も無軌道な動悸が続き無事に解放させてくれない黒い後味が脳裏を駆け巡った。まずTV連続ドラマ版「人狼ゲーム ロストエデン」は全話監視済。本作は主にその地続きで連動する"完結編(集大成)"となる。ドラマ版が抑え目のライトサイドなら映画版はバイオレンスたっぷりのダークサイドな世界観。結論から言えば脚本あるいはアプローチの仕方が面白すぎる。技法で例えればシリーズで築き上げたお約束の流れに対して今回では"脱構築の連続"により展開にツイストをかけている。特に作品の前半でまさかの決選投票,ルールの変更,予言者のフェイクなどのくだりは投票で狙われる対象がいきなりクライマックスの雰囲気を漂わせもう何が起こっても不思議ではない状態を演出していた。規定ルートからかなり異なるアプローチで描き込む辺りは綾部監督の手腕を感じずにはいられない。また邦題の"インフェルノ"が示すよう地獄の連続がプレイヤーを疑心暗鬼にさせ襲う。特にロストエデンで生き残った三人。なんしか今回は予告編でもすでに公表されているよう主演の武田玲奈演じる主人公の野々山が人狼でその影響を受けてかダークヒーローの要素がかなり濃い。彼女ともう一人の人狼,そして親友との決別など前半と後半で主人公の心境に変化が訪れる描き込みは丁寧に描写され人間ドラマの質がかなりお見事に感じました。上半期に邦画でまさかの年間ベスト級の作品に出逢えた。

→作品概要。
監督は「人狼ゲーム」シリーズの過去4作を手掛けた綾部真弥。主演は本作の序章にあたる連続TVドラマ「人狼ゲーム ロストエデン」から主演の武田玲奈,小倉優香,上野優華らがそのまま同役で続投。また本作は連続ドラマから劇場版へそのまま時制が連動する異例のプロジェクトが組まれるなどシリーズを通じても注目を集めた。

→終焉に向かう参加者と真実を追う刑事たち。
最初からゲームの参加者が全員知り合いという設定や運営側の人間が序盤から絡んできたことにより面白味に加速を生んだ要因に思える。また前作の「ロストエデン」で描かれた刑事たちによる外側のパートが劇場版でも時間を割いて描かれていたのは美点だった。ロストエデンでは参加者の主体パートとそれを追跡する刑事たちの裏パートとでほぼ同時進行の形式を取り離れた点(内)と点(外)が次第に結び付いていく比較的にカタルシスが生じやすい構成が為されていた。たとえば過去に人狼ゲームで使用された保養所に刑事たちが直接出向いたり出向いた先で壁際に褐色な血で塗られた「死んでつぐなえ」というロストエデンでの舞台が目の前に登場したりと陰と陽が確実に引き寄せられていく快感はコア目線で観たからか非常にありました。

→総評(失われた楽園から地獄の後半戦開幕)。
総じて今年の暫定ベスト確定。物語の閉じかたに驚嘆を隠せなかったのも事実である。いわゆる終盤のある場面である人物が漏らす「生きてる…」の台詞はゲームから解放された本音と狼に憑かれた事実からそれを終えたダブルミーニングの意味で取れる。本当の意味で物語は"完結"してない。同時にエンドロールでかかる主題歌の「砂時計」はドラマ版以上に歌詞の意味合いとも掛け合わされ泣けた。また序盤で後半戦から新たに組み込まれた生徒たちが「他のやつらは何してんだよ!」のくだりは先に失踪した筈のメンバー内で野々山,向,ルナだけがその場に居ることから周囲に不審感が生まれ苦肉の策で誤魔化しとおす辺りはロストエデンを観ていた身として非常に感慨深い台詞であった。ストーリーの推進力を担うのは確執,憎悪,裏切りだが三つ巴の構図(いじめ事件)をややゲームの支柱に置きすぎた感はぶっちゃけ否めない。それと同様に主人公の野々山が序盤から警察サイドの救出を過剰にあてにしてる考えも何でそれほどの強い確信が持てるのだろうか…はたまた狂人が序盤で吊られたせいかほぼゲームに絡まないのも本質的に消化不良がある。主に越智と宮下の恋人設定,馬渡の凶悪感,辻や結城の存在薄など人間ドラマで展開を右往左往させて場を掻き回すような要素が主眼のいじめ事件(三つ巴構図)によりだいぶ薄まっていたのは拭い切れないように俺は感じました。メインの刑事二人に至っても水野勝が演じた運営側の謎の男と対峙する局面で正直なところ盛り上がりがなさ過ぎる。ようやく正義と悪の首領が対面してあれでは…という後味。というようにあくまでロストエデンを観ていたコア目線では人狼ゲーム史上でこの作品は最高傑作であり文字通り集大成に思える。本シリーズ7作目にしてついに綾部監督やりやがったなという厚い感触。クライマックスの直後から続く展開を見終わった直後はかなり気になったが総ざらい全部を語り尽くさない事がご愛敬なのだろう。ぶっちゃけ序盤から中盤で「お前が人狼だろ!」や「てめぇがやった事だろうッ!」の投票時の印象操作のくだりをもう少し観たかった感覚もある。次作の人狼ゲームも綾部監督に期待したい。初日の初回に観て悔いなし!主人公の心境が前半から後半でどう変化するか…非常にエモーショナルで完成度が高い傑作であった。