Iri17

人魚の眠る家のIri17のレビュー・感想・評価

人魚の眠る家(2018年製作の映画)
4.5
原作が東野圭吾なので、あの堤幸彦が監督してるのに素晴らしい作品になるという。

人の死について考えさせられる作品だ。脳死して意識もない状態で心臓だけ動かして、それは本当に人として生きていると言えるのだろうか?一方で、大切な人がそのような状態になったら、じゃあもう延命はいいですなんて簡単に言えない気持ちだって分かる。
1人の視点から語るのではなく、様々な人の視点とその思想や決断が描かれているので、観客の考えも終始揺り動かされ、最後まで映画の中に没入し、深く考えることができる。人間ドラマとしても秀逸で、周りとの軋轢や社会からの冷たい視線などに夫婦はどう考えているかもしっかりと描かれ、観客も登場人物に感情移入できるのだ。

医療の進歩と越えてはいけない倫理の境界線という医療倫理の哲学的なテーマが描かれ、それが重厚な人間ドラマや東野圭吾が作り上げた素晴らしいストーリーラインにしっかりと絡み合い、映画の最中様々な想いが駆け巡る。終盤はちょっと怒涛過ぎる展開にも思えたが、考えられる最高のラスト20分と言えるだろう。1人リアルサイコパスがいしれっといて気持ち悪いのだが、ああいうヴィクター・フランケンシュタインみたいな奴が現実の世の中にはうじゃうじゃいるから嫌になっちゃう…。

今年の邦画の中でもかなりトップクラスの秀作であった。是非、これを機に命や人間の意味や価値について考えてみて欲しい
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