脳死状態の幼い娘。脳死と心臓死、どちらが本当の死か？一縷の望みをかけて科学の力で娘の生命を維持するがどんどんエスカレートし狂気じみていく母親。彼女の言動に翻弄される家族。生命の選択。
一度は子どもの死を受け入れたもののふとしたことからまだ生きていると感じ、意識を取り戻す可能性を信じてしまったが最後、自分の手で心臓を止めることはできない母。側から見たら狂っているようにしか思えないけれど、信じているからこその言動で本気で必死で…だからこそ余計に痛々しくて。母・薫子役の篠原涼子の演技は圧巻だった。仮面夫婦のお受験用の妻の顔、温かい母親の顔、狂っていく様。誰もが「正気じゃないよ。おかしいよ。」と言いたくなる言動だけれど、彼女がそうなった気持ちもわからないではない…と思わせる説得力ある演技。警察と対峙した時のセリフ、表情。見ていて苦しくてたまらなかった。
科学技術者として生命維持装置の開発にのめり込み一線を越えようとする若き研究者・星野役の坂口健太郎、プールに連れて行って目を離したすきに孫が溺れ脳死になったことを背負う薫子の母役・松坂慶子(当時朝ドラで「武士の娘」を連呼していたからギャップがすごかった💦)、母や姉を思いつつ冷静で姪っ子や自分の娘を思う妹役の山口紗弥加も、この物語をより切なく苦しく深くしていた。
脳死問題は自分より年長者であればまだ割り切れるけれど、自分の子どもだったとしたら…と思うとそんな選択が必要な日が訪れないことをただただ祈ってしまう。
脳死と心臓死について否が応でも考えてしまう映画なのでたくさんの人に見てほしいと思うけれど、かなりヘビーなので心身が健康なときに観たほうがいいかも😓
