南

エブリデイの南のレビュー・感想・評価

エブリデイ(2018年製作の映画)
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This is the day, Your life will surely change.

(君の人生が変わる。今日がその日なんだ)

This is the day, When things fall into place.

(すべてうまくいく。今日がその日なんだ)

The The "this is the day"

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『ナイスガイズ!』での好演で気になっていたアンガーリー・ライス主演作をAmazon Primeで見つけ鑑賞。

「人の価値は外見でなく心の美しさで決まる」

古くからおとぎ話で語られてきた普遍的な道徳観だ。

『美女と野獣』で有名なボーモン夫人の童話集などを紐解けば、そのメッセージが何度も提示される。

とは言え、簡単に言うほどには実行できないのが人間の悲しい性だ。

『エブリデイ』はローファンタジーのラブロマンスという形式をした現代版のおとぎ話で、主人公は他人を見た目で判断しない人間の究極形みたいな女の子。

もう一人の主人公である霊魂の、人柄の高潔さに純粋に惹かれた彼女は、彼が毎日どんな姿で現れても深く愛し続ける。

さまよえる魂である彼が乗り移るのは、本当に多種多様な人々。

男の子、女の子、白人、黒人、アジア人、痩せた子、太った子、目に障害を持つ子、体の性と心の性が一致しない子、そして心を病んで自殺を考えている子。

つまり人種やセクシャルマイノリティーを始め、社会的な議題もテーマに含まれている。

「普遍的な人生訓を、押し付けがましくなく、楽しい物語として提示する」

それが童話の役割で、『エブリデイ』はその面でも成功した作品だと言える。

形式的な話をすると、本作と似た設定として、「入れ替わりモノ」物語は数え切れないほど作られてきた。

古くは『とりかへばや物語』に始まり、『転校生』、『君の名は。』、『椿山課長の七日間』、『おもいでエマノン』、『あさっての方向』、『ココロコネクト』、『メイン・イン・キャット』、『累 -かさね-』、『ジョジョ5部』の終盤。

ざっと思いつくだけでもこれだけある。

本作はこれらと違い、「一つの魂が色んな人物の肉体に入り込み、引っ越しを繰り返す」という設定がユニークだ。

二人の不思議な恋愛模様を根幹としながら、ワンアイデアで「この設定の人物あるあるネタ」の枝葉をところどころに伸ばす構成が飽きさせない。

切ないラストシーンも含めて『バタフライ・エフェクト』などの空気が好きな人はきっと気に入ると思う。

音楽もまた特筆すべきポイント。

劇中で流れるのは、冒頭のFuture islands “shadows”に始まり、Elliott Wheelerのスコアを軸に、BØRNS、Youngr、Bleachersなど、インディーポップ楽曲がメインになっている。

コーラスエフェクトや、薄くかかったリバーブ/ディレイの施されたきらめくクリーントーンのギターに、アップテンポな曲調と80年代を思わせるシンセサイザー。

これらが切なくみずみずしい青春物語を彩っている。

『ウォールフラワー』や『(500)日のサマー』などの音楽が好きな人にもぜひオススメしたい一本だ。
南