手回し式

それいけ!アンパンマン かがやけ!クルンといのちの星の手回し式のネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

30作めの節目にふさわしい映画。これまでの29作品のいいところを凝縮したような良さ。

踊りからマーチ、2番のばいきんまんからの街襲撃、アンパンマン登場と収束、視点を広くして宇宙まで行きゲストキャラ登場、という流れのつながりが気持ちいい。1つの作品としての練りが今までと違うぞ…という予感をここら辺で感じる。

自然の描写がいつもより広い気がする。観ていて気持ちいい。

新しい声優さんだ。すぐに慣れた。ちょっとリアルめ?な声(初代お二人の特徴的な声をキャラぽいとするなら)で結構好き。

バイキン城の遊びが観られて楽しい。電気バリバリ使って遊んでる。

チーズが犬らしいことしてる(その後乗組員として重要な仕事をボンボンこなす)

アンパンマンのマントなしアクションの最高峰を見た気がする。かっっっっっこいいな

徹底的に描かれるアンパンマンの表情の動かなさとばいきんまんの揺れる表情。アンパンマンはほぼシステムくらいの勢いでパンを差し出すことを当たり前と思っているし、ばいきんまんは自分の欲に基づいて生きているから食欲とアンパンマンへの敵対心が葛藤する。人間臭い。

アンパンマンたちの生き方は正の循環(自然の中で体を動かす、人に分け与えて喜びを感じる)、ばいきんまんのやり方はどちらかというと負(負ける、壊す、奪う、捨てる)。そして負の循環はゴミの汚れにあらわれている。ばいきんまんのゴミが循環に巻き込まれたのは偶然で、かれはきっかけでしかない。捨てられたメカたちの捨てられた恨みまではわかっていなかった(全て言語化してしまうホラーマンの鋭さ…)。ばいきんまんという悪役の特殊さがはっきり物語に生きていて良かった。協力することがよけい魅力的になる。

1作めラスボスのどろんこ大魔王を彷彿とさせる敵キャラがこわい。赤いひとつ目は憎悪を表しやすいのか…

キャラの成長が感じられて、映画の積み重ねの成果のように感じられたのが良かった。町の人々を励ます生徒たち。できる範囲で距離を縮める、助けるロールパンナちゃん。

ただのアンパンチ(トリプルパンチ)じゃないのはじめてかな?ばいきんまんは、弱点研究のなかで強化の可能性に気づいていたんだろうな。協力をもちかけたばいきんまんは描かれなかったけど、あんぱんを受け取らなかった彼が与える側になったのだと想像すると…胸熱

いのちの星が題材ということでドーリィとの対比もせざるを得ない。クルンとドーリィは星の役目・性質がそもそも違う。クルンは普通のいのちの星よりも高次の存在で、管理を司っている。流れから外れたものを元に戻す役目を担っている。たぶんアンパンマンのいのちの星のルーツもそこなんだろうな(アンパンマンが生まれた日 を未視聴なので確かめなければいけない)。
ドーリィちゃんの話は、傷を負った物が命を得る、それをどう使うか、といういのちの星の使い方の話だった。今回はクルンそのものの成長が描かれたわけでなく、いのちの星のバランスを戻す、いのちの星そのものの話だった。そしていのちの星とは、その命がそこにあるということなのかもしれない。なんであるかはわからないけどそこにある。バランスが崩れることもあって、最悪みんな死んでしまうので、命を持つものであるばいきんまんも必死になってそれを食い止める。虹のピラミッドにおける水は虹にも必要だし、バイキンやカビにも好ましいもの、だから共闘する、という構図のより高次なやつだ。

全体的に、いつもの映画よりも伏線の張り方が密な気がした。シーンのつながりで違和感がないのはうれしい。アニメーションもキャラの感情描写もお約束の笑い(カバオくんげんき)もあるし、日常描写も濃い気がする。アンパンマンワールドの質感も濃密で、メインキャラ(というかばいきんまん)の感情の機微が生きているし、やなせ哲学の総論のような根源的テーマと話運び(やなせ哲学が語られた本早く読まねば)、30周年の質はすごい!!!!

アンパンマン個人ランキング1位が塗り替えられた。
1.輝け!クルンといのちの星
2.虹のピラミッド
3.ブラックノーズ・幽霊船(決めかねる)
手回し式

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