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万引き家族のsatoのネタバレレビュー・内容・結末

万引き家族(2018年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

「捨てたんじゃない。拾ったんです。誰かが捨てたのを拾ったんです。捨てた人ってのは他にいるんじゃないですか。」

弱すぎて一人では生きることの出来なかった6人の小魚が、生き残るために群れとなり家族を形成する。
根底にあったのは生き残るという打算だが、結果としてそこには愛が存在していた。
ラストシーンにて、祥太は「お父さん」と呟き、凛(じゅり)は彼らの迎えを待つ。

この家族にとってのスイミーは初枝だったのだと思う。
一人一人の事情を把握し、家族の核としてまとめていたのは彼女だった。
初枝がいなくなりほどなく群れは崩壊。事情を把握していないことなどから、ほろ苦い結末となった。
自身の死後、群れが崩壊することを知っていたであろう初枝が、海岸で呟いたのは感謝か謝罪か。

観客優位構造をクライマックスに持ってくる辺りが流石。終盤の"まともな"警察官二人組には明らかに悪意ある演出がなされており、「何も知らないくせに!」という感情が掻き立てられる。
静かなシーンだが、感情は最高潮に盛り上がる。技ありの巧いやり方だと思う。

全体的に皆さん演技がとても巧く大満足なのだが、僕はあえて祥太役の城桧吏に言及したい。あの面子の中にあって存在感で負けない、ついつい目で追ってしまう魅力がある気がします。

象徴的でセンスの良い演出や優れたキャラクター造形、脚本の巧さなど、掘れば掘るほど語りたい事が溢れてくる。
パルム・ドールも納得の名作でした。
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