JIZE

万引き家族のJIZEのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
3.7
家族ぐるみで軽犯罪を重ねては生計を立てる一家の姿を通して犯罪でしか繋がれないその顛末を描いたヒューマン映画‼レイトショーで鑑賞。ノアールな雰囲気も重なりエンドロールの楽曲まで耳をそばだてて集中していると不協和音の奏でからサスペンス映画を観た余韻でした。まず主演のリリー・フランキーが演じた父親の底辺で生き地続きで常にそこら辺を毎日のさぼってそうな仕草や習性,唾を吐き捨てるような物言いなど彼の珍妙な芝居抜きでは本作は成り立たない代物だと感じた。簡潔に云えばどこまでいっても学ばない"大人の成長しなささ"と子どもが親のだらしない背中を観察しててその場から巣立つ対比が非常に興味深い。序盤こそある団地の廊下で震えていた女の子を連れ帰り一家へ招いた事からその女の子が家族の住人それぞれに再生への"気付き"をもたらす更正系のライトサイドな作品だと考えていたが違う。要するに絶えず道を踏み外す大人たちの後ろめたさに見兼ねた子どもたちがみずから遠退いていくようなお話だった。おもに日常の雑音だけにデフォルメさせた無音の演出,家族の渇望と喉から手が出るほどの欲望,お金で繋がりあう家族のうすい絆など是枝監督ならではの巧妙な雰囲気が全編に張られている。序盤の家族総出で家内から屋根付近を見上げる場面や海水浴に羽を伸ばす一幕など序盤と中盤の家族だけにフォーカスする演出と終盤の家族以外の周囲が浮き彫りとなっていく構成も上等なサスペンス的でありうまい。家族の定義を再考させながらも人間同士の繋がりがいかに表層的で脆いのか...カンヌでパルムドールを獲得した今注目の本作をお勧めします。